松商学園・吉水真斗遊撃手（176cm63kg・右投右打）、このショートも2年生だ。

　花巻東・宮沢遊撃手が「静」ならば、吉水は「動」だ。宮沢より6cmほど背が高いせいか、身のこなしがダイナミックで派手な動きに見える。

　それでいて、ムダにバタバタするわけじゃない。シートノックで二塁ベース左のゴロのイレギュラーバウンドをとっさの反応でグラブに吸収し、ストライクスローにつなげた難しいプレー。実戦の中でも、そのまま再現してしまう。長い手足をしなやかに、自在に使いこなして、打球に向き合える。

　右打者の放った低いライナーが、捕球寸前、急に変化して吉水遊撃手の足元を襲う。やはり、とっさのバックハンドで地面スレスレ捕球のアクロバティックなプレーには驚いた。カンで捕りにいったらついていけない打球。捕球の瞬間まで目が追えるメカニズムと、体の柔軟性がすばらしい。

　上田西のプロ注目スラッガー・笹原操希中堅手（3年・179cm78kg・右投右打）のライナーが頭上を襲うと、一瞬打球の様子を見計らうような間をおいてから、見事なジャンピングキャッチだ。

　ゴロに対しても、ライナーに対しても、自分の動きに打球を合わせるタイミングの良さは、他者が教えて身につくものじゃない。得難い天性の才能だ。

　ちなみに、ようやく見られた松商学園・熊谷三塁手、打った瞬間、それとわかる大アーチを広々とした松本市野球場の左中間方向へ立て続けに2本。評判通りの「飛ばし屋」ぶりを発揮してくれた。 

【3】岡山学芸館・宇地原丈智遊撃手（2年）

　松本で準々決勝2試合見て、中央本線で名古屋経由、岡山に入る。

　盛夏の木曽路の山々の緑が心に沁みる。  

　花巻東・宮沢圭汰と松商学園・吉水真斗は思いがけなく出会った「ショートストップ」だったが、岡山学芸館高・宇地原丈智（181cm76kg・右投右打）は最初からお目当てにしていた「2年生遊撃手」。昨年夏の独自大会あたりから、バッティングに非凡さを発揮し始めた大型遊撃手だ。

　試合前のキャッチボールで、これがドラフト候補になっているエースの仲村竜（3年・186cm82kg・右投右打）なのか……と思ったら、「背番号6」だったから驚いた。

　テークバックから腕を巻き上げ、トップを作って豪快に腕を振り下ろす真タテの軌道としなやかな腕の振り。きれいなタテ回転のバックスピン。「投手」でいっても、かなりなところまでいけるはずだ。

　2死一塁でレフトポール下に飛んだ長打性の打球で、カットに入った宇地原遊撃手のロングバックホームがワンバウンドの絶好のストライクスローに。見事なスローイング能力だ。

　松商学園・吉水遊撃手と同様、痛烈なゴロの急な沈みや跳ねにもサッと反応できる敏捷性からも、将来の「ショートストップ」の資格が見える。

　それだけの「能力」があるだけに、シングルヒットでも2点が入る2死満塁のピンチに、回り込めば止めるぐらいはできたはずの三遊間寄りの強いゴロで、バックハンドのグラブの下を抜かれたあたりは、この先のよい勉強になれば……。

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