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夏の甲子園地方予選「今年は2年生ショートが逸材ズラリ」岩手、長野、岡山、兵庫で見つけた“4人の来季ドラフト候補”
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/07/30 17:06
今年のセンバツに出場した神戸国際大付。3年阪上翔也投手以外にも注目のショートを発見した
ことさら素早く動こうとしないのがいい。自分を等身大以上に見せようとする「雑味」がないのがいい。今のボクって、これぐらいのショートなんです……そんなありのままな感じが、かえって伸びしろに見えて、品がある。
驚いたのは、バッティングだ。
1点リードされた2回。1死満塁のファーストストライクを豪快に振り抜いたライナーが右中間のいちばん深いスタンドにそのまま飛び込んだ。スローカーブにスイングを崩された第1打席とは別人のような修正能力。その小柄な体躯で、どうしてそれだけの打球が飛ばせるのか? 「逸材」はいつも驚かせてくれる。
コールドゲームの展開になって、タイムリー狙いの場面でいとも簡単にセンター前、ライト前を続けて、難しい仕事を「いとも簡単」に見せてしまうのも、逸材ならばこそだ。
守りと打撃だけじゃない。ベースランニングの一瞬の判断の鋭さも、2年生じゃない。走攻守のすべてにわたって、まるで社会人のような精度とスピードと、過不足のない落ち着きを兼備した「2年生遊撃手」が花巻東・宮沢圭汰だ。
【2】松商学園・吉水真斗遊撃手(2年)
岩手県大会の盛岡から、長野県大会の松本に飛ぶ。
松商学園が見たかった。今年は超高校級の豪打のチームと聞いていた。高校から社会人、すべてのカテゴリーで「打てる野手」がなかなか見当たらない今季。松商学園の主軸・熊谷大生遊撃手(3年・178cm84Kg・右投右打)と今井英寿外野手(3年・178cm83kg・右投左打)が、北信越有数のスラッガーと聞いていた。
ほんとは「春」に見たかったのだが、ともに故障で実戦回避。県大会にも練習試合にも出場せずに、やっと最後の夏に間に合ったようだ。
今井選手は肩の調子が不十分のようでまだベンチだったが、今春のセンバツに出場した上田西高との準々決勝、熊谷選手は「5番三塁手」でスターティングメンバーに名を連ねた。
その熊谷三塁手の隣りを守る「遊撃手」のフィールディングに、試合前のシートノックから目線がくぎ付けになった。