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性的画像問題「今考えるとひどかった」女子バレーでトイレ盗撮も…東京五輪「無観客」でも被害リスクが消えない理由 

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田村崇仁

田村崇仁Takahito Tamura

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posted2021/07/24 17:01

性的画像問題「今考えるとひどかった」女子バレーでトイレ盗撮も…東京五輪「無観客」でも被害リスクが消えない理由<Number Web> photograph by Getty Images

4月の体操世界選手権で。ドイツ女子代表のザラ・フォスらが首から足首までほぼ全身を覆う「ユニタード」と呼ばれる衣装で登場した

 「子どもたちのロールモデルになりたい」と語るフォスが訴えるのは「自由な衣装の選択肢」だ。英メディアによると、子どもの頃はレオタードでも気にならなかったが「思春期が始まって生理が来てから心地悪さを感じるようになった。露出が多い衣装に気を取られ、不安を抱える選手にとって励ましになれば」と覚悟を口にした。これまで宗教上の理由を除けば積極的にユニタードを着る選手は少なかったが、ルール上の問題もない。約1年前から開始したユニタード作製プロジェクトの反響は大きく「もっと前からあれば競技を辞めなくてよかった」との声も届いた。

 日本陸連アスリート委員会委員長の高平慎士氏はユニホームのデザインの多様な選択肢の必要性を指摘する。「規制するのではなく、選択肢を増やす方法でどう対策していくのか、一緒に考えていきたい。ファッション性などアスリートによって価値観は違うので、一方的に『だめ、NO』というのは効かないと思う」との見解を示す。

「盗撮行為」は刑法で規定されていない

 そもそも国内の「盗撮行為」の刑罰は刑法で規定されておらず、都道府県ごとに迷惑防止条例で取り締まるが、抜け穴だらけとの指摘も多い。海外では韓国、フランスなどで性的目的での無断撮影、拡散行為は犯罪。2016年に海外で行われた国際大会では、日本の女子選手の下半身を狙って撮影していた男性が、現地の法律に基づき逮捕、立件された例がある。

 近年は航空業界の客室乗務員への乗客による撮影行為も問題視され、国内航空業界は昨年9月、法務相宛に「盗撮罪」創設の要請書を提出するなど、議論は高まっている。

 日本のスポーツ界では撮影を許可制にしたり、競技会場で見回ったりと自衛策を講じたが、拡散される画像への対処には限界がある。6月の陸上日本選手権(大阪市・ヤンマースタジアム長居)では迷惑撮影を通報するためホットラインが初めて設置され、4日間を通して複数の通報があった。警備に加えて警察署に協力を要請し、私服警察官が会場を巡回した。

 法律の専門家によると、日本の性犯罪で多いのは圧倒的に痴漢や盗撮とされ、手口が粗暴でない盗撮は江戸時代から続く日本特有の「のぞき見文化」との指摘もある。だが、そうした行為が許されるはずもなく、悪質な営利目的や性的画像悪用の嫌がらせは法規制の対象に加えるべきだとの意見は多い。最近は肌の露出を抑えながら高い機能性を備えるユニホームの開発をメーカーに期待する声も選手サイドから出ている。

 こうした動きをどう形にしていくのか。それが今後の対策強化の焦点になりそうだ。

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