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性的画像問題「今考えるとひどかった」女子バレーでトイレ盗撮も…東京五輪「無観客」でも被害リスクが消えない理由 

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田村崇仁

田村崇仁Takahito Tamura

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posted2021/07/24 17:01

性的画像問題「今考えるとひどかった」女子バレーでトイレ盗撮も…東京五輪「無観客」でも被害リスクが消えない理由<Number Web> photograph by Getty Images

4月の体操世界選手権で。ドイツ女子代表のザラ・フォスらが首から足首までほぼ全身を覆う「ユニタード」と呼ばれる衣装で登場した

 5月に警視庁がテレビ番組の女性アスリート画像をアダルトサイトに無断転載した著作権法違反容疑で男を逮捕したのは、JOCから情報提供を受け、捜査して立件に踏み切った全国初めてのケース。女子バレーボール選手の衣服が透けて見える動画を販売した名誉毀損容疑、中学生の女子水泳選手のテレビ番組画像をアダルトサイトに無断転載した著作権法違反容疑でそれぞれ逮捕した例もあった。中には1億円を超える収入を得たケースもあったとみて調べているようだ。

 バレーボール女子元日本代表で2004年アテネ五輪に出場した大山加奈さんは共同通信のインタビューで「今考えるとひどかった」と、Vリーグのトイレが盗撮されていた衝撃的な実態を明かしている。赤外線カメラで下着が透けるように撮影された写真がネット上に掲載されたこともあったという。12年ロンドン五輪体操女子代表の田中理恵さんは現役時代、カメラのシャッター音に「正直嫌だな」と感じながら、自らの声を抑えて演技していた経験を打ち明けている。

 女性蔑視発言で森喜朗前会長が辞任した東京五輪・パラリンピック組織委員会は3月、新設した「ジェンダー平等推進チーム」の取り組みとして、競技会場での「禁止行為」に「選手らに対する性的ハラスメント目的の疑いがある写真や映像の撮影」を新たに追加。アーティスティックスイミングの五輪銅メダリストで組織委の小谷実可子スポーツディレクターは「私も選手時代、性的ハラスメントに不安を持って競技していたこともあった。禁止行為に明記され、逮捕者が出たことは大きな一歩」と強調した。

 だが現在の軽犯罪法や条例の取り締まりの対象は主に衣服で隠された体や下着を撮影する行為で、ユニホーム姿がそれに該当するかどうかの判断は難しく、罰則も軽い。大会関係者は「無観客でも全く気が抜けない。仮に国内外で五輪選手の加工した画像や動画が出回ったら、開催国としての信用問題につながる」と警戒感を強める。

「もっと前からあれば競技を辞めなくてよかった」

 体操のドイツ代表チームは7月10日から東京五輪に向けて事前合宿地の新潟県上越市で練習を開始し、五輪本番では全身を覆うタイプのユニタードを着る予定という。

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