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性的画像問題「今考えるとひどかった」女子バレーでトイレ盗撮も…東京五輪「無観客」でも被害リスクが消えない理由
posted2021/07/24 17:01
text by
田村崇仁Takahito Tamura
photograph by
Getty Images
「デジタルタトゥーの傷は簡単に消せない。不安を抱えて競技に集中できない選手の悩みも聞いてきたし、日々の努力を表現する気持ちを踏みにじる行為です」
アスリートへの性的な意図を持った隠し撮りや画像拡散の被害が国内外で広がる中、マラソンのテレビ解説でもお馴染みの増田明美さんがいつもより声のトーンを落として、問題の根深さを語った言葉が印象深い。
「デジタルタトゥー」とは一度インターネット上で拡散した個人情報や中傷がタトゥー(入れ墨)のように消えない状況を指す。
スポーツ界で20年以上前から続く性的画像問題は最近、スマートフォンの普及で中高生や応援するチアリーダーにも被害が急増している。バッグに穴を開けて撮影したり、腕時計型カメラを持ち込んだり、手口も巧妙化。SNSを通じてアスリートに卑劣な言葉がダイレクトメールで直接送られたり、加工した画像を性的な意図で流布されるなど、嫌がらせが深刻化している。
「レオタード」ではなく「ユニタード」
東京五輪・パラリンピックでも「盗撮対策」が強化され、実効性を高めるために警察とも連携した通報システム構築を視野に入れる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京五輪は全42会場のうち約8割が集中する東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏と北海道、福島を加えた1都1道4県が「無観客開催」となり、会場での被害リスクは低減したが、正式なパスを持つ取材メディアの画像や動画でもSNS上で引用されて水面下で売買の対象になる時代だ。
4月にスイス・バーゼルで行われた体操の欧州選手権ではドイツ女子代表で21歳のザラ・フォスら3選手が定番の「レオタード」でなく、首から足首までほぼ全身を覆う「ユニタード」と呼ばれる衣装で登場して世界に一石を投じた。彼女らがスポーツが性的に消費される画像問題に抗議する意思を込めたのと同時に、東京五輪に出場するアスリートからも自ら安心して競技に集中できる環境を守る新たな動きが広がっている。
逮捕者第1号、Vリーグのトイレ盗撮も
性的画像問題は昨年7月末に複数の陸上女子トップ選手が日本陸連のアスリート委員会に「胸や尻などをアップで無断撮影される被害」を相談して表面化し、同11月に日本オリンピック委員会(JOC)などスポーツ7団体が「アスリートの盗撮、写真・動画の悪用、悪質なSNS投稿は卑劣な行為」として被害撲滅に取り組む共同声明を発表した。相談窓口の特設サイトを開設すると、半年間で約1000件の情報が寄せられ、逮捕者が相次ぐ事態に発展している。