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得点圏打率はパ2位、28歳呉念庭はなぜ西武の救世主になれた? 初のオールスター出場は台湾でも話題「毎日、連絡が来ます」
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph bySankei Shimbun
posted2021/07/16 06:00
ホームランを放ち、ベンチに笑顔で戻る呉念庭。初のオールスターへの意気込みを語った
台湾出身の呉は「甲子園に憧れて」日本の岡山・共生高校に進学。第一工大を経てドラフト7位で入団し、今年がプロ入り6年目に当たる。
2019年は一軍出場がなく、2020年は51試合52打席に留まっていた。ただし今シーズンは前半戦だけで80試合に出場。好成績を残す呉に、いったいどんな変化があったのか。
「ここまでの成績は、まず、でき過ぎかなと思っています。もちろん試合に出続ければ、ある程度の数字を残せる自信はありましたけど……。これまでは出場機会をいただいても、なかなかそのチャンスをつかめなかった。でも今年は、これまで練習してきたことが出せている。自分のやってきたことに間違いはないと、今は自分を信じてプレーできています」
最も大きな変化はやはりバッティングの成長だろう。呉はB班スタートとなった今春のキャンプで打撃改造に取り組んだ。
「キャンプが始まるときに、二軍打撃コーチの高山久さん、上本達之さんと話をして『これまでとは違うことをしないと一軍でプレーするのは厳しい』と決意しました。まずはスイングの量を増やして、その中でフォームを変えていこうと……。振っている中で自然と見つけたのが今のフォームです。無駄な動きがなくなったと自分でも思います」
以前まではバットを揺らしてタイミングをとっていた呉だが、膨大な量のティーバッティングやフリー打撃を繰り返し、筋肉が疲労したときにこそバットがスムーズに出ることに気づいた。バットを寝かせて構え、最短距離でボールをとらえるスイングが身についた。
昨シーズン終盤の3試合
もう1つ、呉を打撃改造へと向かわせたのが昨年の経験だ。
昨シーズン、クライマックスシリーズ進出を賭けて戦った終盤戦。呉は11月7日から3試合に出場し、いずれも4打席に立ってヒットを記録している。しかしチームは引き分けと2連敗でクライマックスシリーズ出場を逃した。
「もちろん今年こそは一軍で活躍したいという危機感は強かったのですが、昨年の最後3試合を経験したことで『試合に出てチームに貢献したい』という思いが余計に強くなりました。負けてしまったのは悔しいですけど、いい緊張感の中で試合ができた。その3試合があったからこそ、今年はもう一度、レギュラーを目指して戦いたい、と」