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男子4×100mリレー「銀メダル以上は実現できる?」「桐生とデーデーはなぜ選出?」理想オーダーに必要な“3つの条件”
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byAsami Enomoto
posted2021/07/16 17:02
個人として東京五輪出場を逃した桐生祥秀。男子リレー代表として、東京五輪の舞台に立てるか
高3の世界選手権以来、ケガで出場できなかった時以外は日本チームの主力として存在感を見せている。特に14年以来走っている3走は、世界トップレベルで、チームの大黒柱。セパレートコースで走る4継では、2~3走のバトンパス付近でそれまでの見かけの差も一気に詰まってくるため、そこで慌てない冷静さも必要。経験値の高さから見ても、3走・桐生はチームにとって絶対的に必要な存在だ。
またデーデーは100mの自己記録は10秒19、200mは20秒63で、他の選手と比べてトップスピードの高さはまだ未知数と言える。だが今季は勢いがあるうえ、2位になった日本選手権のデータでは10m毎の平均速度は50~70mの2区間は全選手中最高の秒速11.38mで、40mからの5区間が秒速11m台と、後半に減速しない強さは彼の武器でもある。また代表チームの経験はまだないが、東海大は短距離部長時代にアンダーハンドパスの採用に踏み切った高野進コーチが指導し、チームでもアンダーハンドに慣れているだけに、4走として起用できる可能性が高い選手として選出されたのだろう。
日本選手権時点では「不安を感じる4継」だったが……
ただ、今回の合宿にはサニブラウンは参加せず、彼を含めたバトン練習はできない状況だ。土江コーチは「ハキームを指導するレイダーコーチと話し合い、今は状態が完ぺきでないだけに、彼の下で本番の200mに向けてしっかり準備をさせるのを選んだ」と説明した。19年世界選手権も経験していて、200mをしっかり走れるようになれば4走として起用できると自信を持っている。「金メダル獲得のためには、ハキームは絶対に必要」という土江コーチの、攻めの戦略でもある。
日本選手権の結果を見た限りでは、絶好調の選手が少なく不安も感じる男子4継だったが、合宿での光明となったのは桐生に復調の気配が見えてきたことだった。
「日本選手権後はいろいろな治療をしてジョギングもしていなかったが、今日は少しスピードを上げて走ったら違和感も痛みもなかった。アキレス腱が気にならなかったのが一番の収穫。あとは練習をして最高のパフォーマンスができるようにしていきたい。3走でも4走でも自信満々で臨めるようにしたい」(桐生)
6月の布勢スプリントの予選では追い風参考ながら10秒01を出し、9秒台も望めるまでになっていただけに、アキレス腱痛さえ解消できればその走りを取り戻せるはずだ。