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「二番煎じでは需要がなくなるだけ」29歳になった柳田将洋が語る新しい目標…バレー界の“リーダー”としての期待
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano/AFLO
posted2021/07/06 11:03
主将として日本代表を牽引してきた柳田将洋。東京五輪の夢は断たれたが、そのリーダーシップでバレーボール界に大きな影響を与えてくれるはずだ(写真は2018年ネーションズリーグ)
リーグをプロ化して新たなファンを獲得しているバスケットボール、外部の意見を求めて組織の刷新を図るハンドボールなど、これからを見据えたスポーツ界の変化も目まぐるしい。
対してバレーボールはどうだろうか。これまでも多くの国際大会が日本で開催され、さらに試合の模様はキー局のゴールデンタイムに連日放映されてきた反面、その恵まれた現状に甘んじる部分も多い。“変化”という面で見れば他競技に遅れを取っているのは否めない。
自らが人生を懸けて打ち込んできた、それほどの魅力があるバレーボールだからこそ、もっと変えられることもあるのではないか。先を見据えるからこその変化も必要だと柳田は言う。
「もう少し建設的な議論があってもいいんじゃないかな、と考えることもあります。たとえば僕が(東京五輪の代表に)選ばれなかったことに対しても、いろんな意見があっていい。僕自身も(落選には)思い当たるところがあるわけだし、見る方々からしても何が足りなかったか、とか、なぜこのメンバーなのか、とか。そういういろんな“WHY”をぶつけ合ってもいいんじゃないかなって思います。
期待して下さっていた分、何で選ばれないんだと憤慨して下さるのは選手としては嬉しいです。でも、他の競技だったらメンバー選考に対してもっと辛辣に述べられている。そこに賛否が生まれ、議論が活発になる。そういう意見があれば見る人たちのレベルも上がるし、競技のレベルも上がる。バレーボールってまだまだいろいろ変化したり、伸びていく余地があると思うんです」
まずはファーストキャリアを全力で
日本代表の主将として、リーダーシップを発揮する姿を幾度となく見てきた。劣勢からでもポイントをもぎ取るサービスエースはさることながら、味方が点を獲った時には誰よりも笑顔で喜びを共有する。誰もが担えるわけではない「主将」という立場で、果たすべき役割を全うしてきた。だから「東京五輪」という一つの夢が絶たれたとしても、これからを切り拓くリーダーとしての期待は大きい。
柳田自身は、この先に進む道をどんな風に描いているのか。「ボロが出そうだから明言は避けます」と笑いながらも、選手である今、何に重きを置くべきか――その答えは明確だった。
「オリンピックも大きなことではあると思いますが、それがなくなってもまだアスリートとして続けていく以上、大事なのはファーストキャリアでどこまでやれるか。そこをフォーカスし続けた先に、セカンドキャリアがくっついてくると思うんです。だから僕が一番やってはいけないのは(セカンドキャリアに)片足突っ込んだ状態で、ファーストキャリアを続けてしまうこと。それはものすごく難しい体重のかけ方だと思うし、当然結果もついてこない。その線引きをしっかりしないといけないし、今やるべきことをやりきらないと、自信を持って“次はここに行きたい”と思っています」