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歩くことさえできなかった少年がVリーガーになるまで「人生はきっかけ次第で好転する」…春高で輝く柳田将洋のプレーに憧れて
posted2021/07/12 11:02
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
最高到達点347cmから鋭いスパイクを次々と打ち込む。
端正なルックスと親しみやすい人柄でファンも多い。
その姿からは、かつてこの男が2年もの間まともに歩くことさえできなかったことなど想像できない。
日本バレーボールの最高峰・Vリーグディビジョン1のVC長野トライデンツ(昨季9位)に所属するウィングスパイカー・戸嵜嵩大(とざき・たかひろ/26歳)は中学時代、病に悩まされていた。
『大腿骨頭すべり症』
中学2年生の新学期あたりから足の痛みを感じ始め、日を増すばかりに痛みは強くなり、いずれ歩く時は足を引きずるようになった。東京都選抜の選考会も控えるほど能力を評価されていたが、バレーボールどころではなくなってしまった。
当初は「これで明日から部活に行かなくていい」と厳しい練習から解放されたという学生らしい思いを抱いていたがというが、診断を聞いた母が泣き崩れる姿を見て、ただごとではないことを悟った。
大腿骨頭すべり症は太ももの骨(大腿骨)の端部が股関節の成長板でずれを起こし、分離した状態になること。そこから2年にわたる闘病生活に突入し、入院、手術、リハビリの日々が続いた。
「みんなと同じこと、以前まで普通にできていたことができない。(反抗期も重なり)そのイライラを家族にもぶつけてしまっていました。親に“なんでこんな体に産んだんだ”と言ってしまったこともありました」
いつまで経ってもまともに歩くことさえできず、中学でバレーボールも辞めると決めた。だが、ある2つの出会いが戸嵜を再びコートに戻すことになる。