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フランス相手に世紀の大金星を挙げたスイスの英雄 小柄な守護神・ゾマーが“欧州屈指のGK”である理由 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/07/02 17:02

フランス相手に世紀の大金星を挙げたスイスの英雄 小柄な守護神・ゾマーが“欧州屈指のGK”である理由<Number Web> photograph by Getty Images

身長183cmとGKの中では小柄なゾマーの活躍でスイス代表は快進撃を続けている

ペナルティエリア内でホバークラフトのように移動する

 ゾマーは、具体的にどんなところが優れているのだろう。

 所属するボルシアMGでGKコーチを務めるシュテフェン・クレブスは、ゾマーのプレースタイルについて、「スイスやイタリア式のGKトレーニングを受けてきている賜物」と分析する。

「ボールにアタックするなど、積極的に前へ出て守る気持ちが強い」と指摘するように、ゾマーはゴールライン上で待ち構えるだけでなく、常にボールに対してアタックできるタイミングを見計らいながら、最適なポジション取りを繰り返している。

 だから、ハイボール処理も素晴らしい。ボールが飛んでくる位置を予測し、落下地点に入るスピードと精度が高い。「大事なのは勇気と良いポジショニングと良いタイミング。それに、ジャンプ力と空中で安定感を保てるかどうかだ」とゾマーは語っている。

 シュートセーブに関しては、2019-20シーズンのブンデスリーガで30試合以上出場を記録したGKでベストの数字を残している。

 トップレベルのGKは派手なセーブが少ないと言われる。ポジショニングが悪かったり、足の運びや体重移動がうまくなかったりすると、不必要に飛ばざるを得なくなってしまう。ゾマーは違う。優れた状況判断と細かいステップで、何気なく相手のシュートに対応し、涼しい顔でセービングしているように見える。それを支えているのが、前後左右の最適なポジションを微調整できる優れた敏捷性なのだ。

 動作があまりにもスムーズなので、ドイツ誌『シュピーゲル』は「ペナルティエリア内で、まるでホバークラフトのように移動する」と書いていたほどだ。

 クレブスGKコーチは「GKにとってはシュートに対する1歩目が極めて重要だが、その足の動きがゾマーに関してはほぼパーフェクトの域に達している」と絶賛する。ゾマーは、シュートが打たれた段階ですでにシュート方向への移動があり、すでにボールをとらえていることが少なくない。

「見た目にスペクタクルなセーブを披露するGKではないかもしれない。だがそれは、彼が非常に優れたポジショニングからセーブしている証拠でもあるのだ」(クレブス)。

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