濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
デスマッチファイター・ドリューは血がドクドク流れても試合を止めなかった 「ケガある、傷ある。でもやる。大好きだから」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/06/30 11:00
ドリュー・パーカーは血だらけの背中でリーグ戦決勝を闘い抜き、観客を魅了した
流れを変えた“トペ・コン・ヒーロ”
両者の準決勝での対戦が決まったのは3月31日。すでにかなりの時間が経っていた。団体の活動休止期間もあり話題性が薄れがちだったことは否めない。試合はドリューが劣勢だった。
だが、すべての流れを変えたのもドリューだった。新木場1stRINGの壁をよじ登り、5メートルはあろうかという高さからジャックめがけてダイブしたのだ。しかも単なるボディアタックではなかった。前方宙返りしながら相手にぶつかるトペ・コン・ヒーロだ。
この一発で、試合の“主語”が完全にドリューになった。それは会場の空気ではっきり分かった。「どちらが勝つか」ではなく「ドリューが勝つか負けるか」あるいは「ドリュー勝ってくれ」という試合になったのだ。その空気の中で、ドリューは勝った。関節技でジャックの体と釘板にサンドイッチされ、投げつけられもした。だが粘りに粘るほど応援ムードは濃くなる。そして一瞬の切り返し。十字架固めで押さえ込んで3カウントを奪う。
ジャックはFREEDOMSのベルトを巻いたことがあるから、大番狂わせだった。いや、それを言うなら若いドリューにはほとんどの勝利が番狂わせだ。このリーグ戦では宮本裕向、大日本プロレスの現デスマッチヘビー級王者である塚本拓海に勝っている。
「宮本との試合、無理って思われたけど無理じゃなかった。塚本も無理? 無理じゃなかったでしょ。ジャックにも勝った」
日本語でマイクアピールし、バックステージでコメントしたドリュー。新木場でのスーパーダイブは“長すぎた”リーグ戦に再び火をつけた。
黒みの混じった血がドクドクと流れ続けて止まらない
決勝の6月28日は月曜日。後楽園ホールは満員にはならなかった。ただでさえ平日の集客は難しい上にコロナ下だ。当初のスケジュール通りなら日曜の大会が決勝だったのだが。
アクシデント続きだった一騎当千、その決勝でも思わぬ事態が起きた。序盤、ガラスボードに叩きつけられたドリューが背中から大流血したのだ。デスマッチで流血は当たり前なのだが、その量が常軌を逸していた。黒みの混じった血がドクドクと流れ続けて止まらない。これはまずい、試合をストップしたほうがいいんじゃないか。そんな雰囲気が漂った。どこからか「これマジでヤバい」という声が聞こえた。