濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
デスマッチファイター・ドリューは血がドクドク流れても試合を止めなかった 「ケガある、傷ある。でもやる。大好きだから」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/06/30 11:00
ドリュー・パーカーは血だらけの背中でリーグ戦決勝を闘い抜き、観客を魅了した
凶器ありきではなく、プロレスプラス凶器で
現在、蛍光灯はデスマッチの“メインアイテム”となっている。塚本の主張は「蛍光灯に限らず、なんでも“頼りすぎ”はよくない結果になる可能性がある」というもの。
「デスマッチもプロレスなので。僕はプロレスの攻防プラス凶器という形でやりたい。凶器ありきじゃなくね。“過激”とか“狂気”が賞賛されるのが今のデスマッチ。ただ違う方向性というか、今とは違う過激さもあっていいはず。デスマッチの可能性というんですかね、そこを探りたいんですよ」
あらためて話を聞くと、塚本はそう語った。背景には社会の状況もある。デスマッチで使われる蛍光灯は使用済みのもの。現在は各家庭やオフィスでLED照明への切り替えが進んでいる。LEDは寿命が長いから、いずれ廃棄される蛍光灯は減るだろう。だから今のうちから「蛍光灯に頼らないデスマッチ」を模索する必要がある。
「デスマッチはそもそも危険なんです」
塚本の主張は『週刊プロレス』が特集を組むほど話題となった。塚本に賛同する選手も、反対する選手もいた。それぞれの選手の声が、塚本には深く響いたそうだ。
「やっぱり今のデスマッチのあり方というのは、お客さんの支持があってのこと。今すぐ変えようとしても、お客さんがついてこなくては仕方ないなと。僕も“蛍光灯否定派”ではないですし。それに、危険なことはやりたくないってことではないんです。葛西さんは蛍光灯だけが危険なわけじゃないと言っていた。その通りで、プロレスは、デスマッチはそもそも危険なんです。それなら、今は“サブキャラ”になってる凶器にスポットを当てたり、蛍光灯以外の部分を見直したいなと。他の選手とは違うやり方をしたいという、選手個人としての生き方の問題でもあります」
蛍光灯こそデスマッチの魅力と考える選手もいる。独自の考えを持つ者も。塚本が所属するプロレスリングBASARAの代表で、元デスマッチヘビー級王者の木高イサミは、このリーグ戦で蛍光灯を支柱にした関節技を使っていた。関節付近でバキッと蛍光灯を割り、ダメージとともに観客へのインパクトも与える。キャリアのあるデスマッチファイターとして、蛍光灯を使うからには攻め方をアップデートさせていきたいとイサミ。