濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
デスマッチファイター・ドリューは血がドクドク流れても試合を止めなかった 「ケガある、傷ある。でもやる。大好きだから」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/06/30 11:00
ドリュー・パーカーは血だらけの背中でリーグ戦決勝を闘い抜き、観客を魅了した
リング下に落ちたドリュー、駆け寄るクリス
まして決勝の試合形式は「ノーキャンバスデスマッチ」だ。リングはキャンバスとマットが取り外され、板がむき出しの状態。ボディスラムが必殺技になりうる。そこに大流血した背中で受身を取ったらどうなるか。
ドリューは足元をふらつかせながら、しかし笑いながら試合を続けた。伊東も背中を攻める。相手が痛めた箇所を攻めるのはセオリー。そう言わんばかりだ。
リング下に落ちたドリューに、すかさずセコンドのクリス・ブルックスが駆け寄る。同じイギリスから日本に移住し、DDTで活躍する彼はドリューの盟友だ。傷口にタオルをあてるとテーピングで固定する。試合を止められたくないドリューがリングに上がろうとするのを、周りの選手が抑えた。橋本和樹はドリューを鼓舞すべく観客の拍手を煽った。
コロナ禍に祟られたリーグ戦、その決勝を不本意な負傷ストップで終わらせたくはなかった。とはいえドリューの体は心配だ。とにかく試合を全うしてくれ。祈るような視線の中でドリューは闘い続け、伊東も決して遠慮しなかった。
「蛍光灯使いたくない?デスマッチファイターでしょ?」
試合を決めたのはドリューのスワントーンボム2発だ。トペ・コン・ヒーロと同じく前方宙返りし、背中から着地する。背筋を反らせた空中姿勢の美しさを白鳥になぞらえた優雅な技を、血まみれの背中で放つ。1発目はコーナー最上段から、そしてフィニッシュはギガラダー(特大のハシゴ)から。
初出場、初優勝。外国人選手の一騎当千優勝も初だ。リーグ戦は大穴ドリューがハッピーエンドをもたらした。いつの間にか背中の出血は止まっていた。結果として、試合続行の判断は正解だったのだ。毎週のようにデスマッチを行なっている団体とその選手、スタッフの知識や経験則がものを言ったのかもしれない。
「(日本に来た)2年前、僕は21歳。ずっと日本に住んでます。大変だよ、イギリスはちょっと遠いから。友だちいない、家族いない。でも2年経って、新しい友だちある。新しい暮らしがある。日本、故郷。大日本、ホーム」
やはり日本語で語ったドリューは「まだ終わりじゃない」と続け、リングに現王者の塚本を呼び出した。もちろん挑戦表明だ。
「蛍光灯使いたくない? デスマッチファイターでしょ?」
そう言うと残っていた蛍光灯の上で受身を取る。チャンピオンへの挑発、あるいは反論だ。今年1月にベルトを巻いた塚本は、蛍光灯を多用する現在のデスマッチに問題提起をした。それが選手の間でも波紋を呼んだ。