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ホークスの36歳ベテラン打撃職人・長谷川勇也が語った“極意”「スタメンと代打では何が一番違うか?」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2021/06/18 17:15
ホークス36歳の打撃職人・長谷川勇也。5月29日の巨人戦で2本塁打の大活躍
「正直、心折られました。一瞬『いいや』という気持ちになりました。そんな気持ちになったのは初めてでした。だけど、自分の打撃がそれをさせてくれなかった。もういいや、と思ったけど凄い打撃が出来ていた。今までの積み重ねですね」
若い頃から誰よりもたくさん練習して、多くの時間を割いて技術と向き合ってきた。
プロ入り前からそうだった。山形県生まれで、地元の強豪の酒田南高校でプレーした頃の話だ。「周りは関西からの野球留学がほとんど。地元の選手からすると酒田南は高い壁なんです。実際に入ってみると、やはり技術や考え方などすごいと感じることばかりでした」。
中学までは投手だったが、すぐに諦めた。入学直後に肩を痛めたのも原因の一つだが、「打撃練習でそれまでの軟式から硬式に変わってボールがものすごく飛ぶようになった。それが楽しくて、もう投手はいいやって気持ちになっちゃいました(笑)」。すっかり打撃の魅力に取りつかれた長谷川は、電車で通学している時も授業中も食事中も寝る前も打撃のことばかり考えるようになった。
「グラウンドに行ってそれを試す。自分でも分かる変化がそこにある。それが嬉しくて、また考える」
現在の原形がすでに出来上がっていた。
選球体は、野球人生の集大成なのかもしれない。
「今はいろんなものを省けて、磨きたい部分の数が減ってきたというか、ここを突き詰めようという感じでやっています」
年齢を重ねて体力や筋力でカバーできなくなるからこそ、より本質を磨くのだと頷いた。
「技術でしか相手に勝つことは出来ない。打席に入ったら自分の技術を出し切れるかどうか。それだけです」
今年の交流戦。ホークスは5勝9敗4分で9年ぶり3度目となる負け越しを喫したうえに、勝率3割5分7厘で過去ワーストを記録した。
チームを見るとベテラン勢にやや元気がなく、ファンからの厳しい声も散見されている。しかし、勝負どころとなる時期が来た時、ここ一番で頼りになるのはやはり実績と経験が豊富な選手たちだ。
打撃一閃――鋭い光を放つようなスイングで、チームには勝利を、ファンには笑顔を呼び込む仕事をしてくれるはずだ。