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オリックス打ちまくって11年ぶりの交流戦V…要因は中嶋監督の“我慢”? 出塁率にこだわる1番・福田周平の驚異的な数字とは 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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posted2021/06/18 06:01

オリックス打ちまくって11年ぶりの交流戦V…要因は中嶋監督の“我慢”? 出塁率にこだわる1番・福田周平の驚異的な数字とは<Number Web> photograph by KYODO

12日の広島戦で走者一掃のスリーベースを放った福田周平。1番打者として11年ぶりの交流戦優勝に大きく貢献した

 今年のオリックスは、一、二軍の入れ替えが昨年までより少ない。以前は、四球で崩れたり打ち込まれた投手や、調子を落としたりミスをした野手はすぐに二軍に落とされていたが、今年は違う。一度失敗をしても、継続してチャンスを与えられる。

 リリーフ陣では漆原大晟やK-鈴木、村西良太など。野手では杉本や宗佑磨、2年目の19歳・紅林弘太郎などが、継続して起用されることで力を発揮し始めた。

 先発でも、試合序盤に失点して3連敗していた田嶋大樹をローテーションから外さなかった。その田嶋が6月12日の広島戦で5回無失点と好投し、約1カ月ぶりの勝利を挙げた。中嶋聡監督は試合後、我慢強い起用について聞かれると、こう答えた。

「我慢というか……なんとか取り返そうとする姿が必要だと思うので、その姿を見せてくれたら、僕は別に、我慢はできますね」

 だから選手は縮こまることなくプレーできるし、経験を力に変えられる。

「見放されたんじゃ…」から這い上がった福田

 一方で、二軍にいる選手にとっては、昇格のチャンスが限られる厳しい状況とも言える。特にベテランや中堅選手にとっては。

 昨年はコロナ禍でイレギュラーなスケジュールだったため、一昨年と今年を比較すると、一昨年の4月に2軍から1軍に昇格したのは計22人でそのうち野手は11人、5月は計21人で野手は10人だった。それに対して今年は、4月に昇格したのは計8人で、そのうち野手はわずか3人。5月は計15人で、野手は5人と狭き門になっている。

 4年目の28歳・福田は、その状況から這い上がった。

 福田は開幕を一軍で迎えたが、3月30日に登録を抹消され、そこから先の見えない二軍生活が続いた。

「めちゃくちゃ悔しかったですよ。下にいて、ずっと声もかからず……。正直、ネガティブにはなってきますよね。このまま上がれないんじゃないかとか、見放されたんじゃないかとか……」

 そんな時、知人に教えてもらったあるメジャーリーガーの記事が、福田を奮い立たせた。

 それは、4589日ぶりにメジャー昇格を勝ち取った36歳、ショーン・カズマーJr.(ブレーブス)の記事だった。

「すごいですよね。この人は12年半もずっと、マイナーリーグでプレーし続けてたんやと思ったら、僕の立たされてる状況なんて、屁みたいなもんやと思って(笑)。こんなんで落ち込んでてもしかたないなっていう気持ちになりましたね」

【次ページ】 昇格後は「1番・センター」に定着

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