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オリックス打ちまくって11年ぶりの交流戦V…要因は中嶋監督の“我慢”? 出塁率にこだわる1番・福田周平の驚異的な数字とは
posted2021/06/18 06:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
KYODO
今年の交流戦は、オリックスの2010年以来11年ぶりとなる優勝で幕を閉じた。
11年前は、岡田彰布監督(当時)が話題の中心だったが、今回は選手が主役だった。
6月11日の広島戦で、あと2イニングで完全試合という圧巻の投球を披露し、交流戦の防御率1.23でチームに3勝をもたらしたエースの山本由伸、巨人打線を7回2死までノーヒットに抑えた19歳の宮城大弥をはじめとする投手陣。そして12球団最多の96得点を挙げた打撃。交流戦ではまさに投打がかみ合った。
この5、6月は、昨年まで深刻な得点力不足だったのが嘘のように点を取った。昨年の首位打者・吉田正尚は今年も好調で、三振が少なく、打点や本塁打は昨年を上回るペースだ。昨年までは吉田が1人抜きん出ていたが、今年は杉本裕太郎が覚醒し、T-岡田が勝負強さを発揮するなど、他の長距離砲も活躍していることで得点力が増した。
そして、5月11日に一軍昇格し、1番に固定された福田周平が、打線の起爆剤となっている。交流戦ではビシエド(中日)、森友哉(西武)に次ぐ.391という高打率を残し、出塁率は12球団トップの.500。2回に1回塁に出るという驚異的な数字を残した。
福田はいつも、目標とする数字を聞かれると「出塁率4割」と答えるが、それを大きく上回った。
好調の要因は打席での“落ち着き”
好調の要因は、コンディションのよさと打席での“落ち着き”にあると言う。アグレッシブな姿勢が持ち味の福田だが、意外にも打席では“前のめり”が大敵になる。
「僕が打てていない時というのは、前のめりになりすぎている。ボールを、迎えに行ってしまってるんです。ボールはキャッチャーミットに収まるわけですから、待っていたら来るじゃないですか。でも『打ちたい打ちたい』が先行すると、自分からボールに向かって行ってしまう現象が起きる。それが今年は今のところ出ていなくて、しっかり落ち着いて、気持ちをステイバックさせながら打席に立てています」
打率や安打数などではなく出塁率を意識するのも、“前のめり”を予防するためだ。
「塁に出ることを重視するのは、変なスランプに陥らないためです。僕は打率を目標にしちゃうと、打たないといけないという焦りが出るんですよね。やっぱり『打ちたい』が先行すると、ボール球に手を出してしまったりする。でも『フォアボールでもなんでも』という意識があれば、好球必打でいけますから」
落ち着いて待てているから、際どいボール球を見極められたり、ファールで粘ることができる。福田はじっくり待ちながら、食らいつく。
6月6日の中日戦では、福谷浩司に16球投げさせた挙句、タイムリーを放った。投手にとって厄介な打者となっている。