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大山悠輔「4番の味を噛み締めて」~主将の勝利至上主義~
posted2021/06/18 07:00
text by
佐井陽介(日刊スポーツ)Yosuke Sai
photograph by
Hideki Sugiyama
昨年は打率.288、28本塁打、85打点とキャリアハイをマークし、飛躍の年となった背番号3。今年新たにキャプテンに就任し、さらなる重責を背負い戦う4番を貫く、心の「芯」とは――。
ひとかけらでも邪心が紛れ込んでいれば、乾いた快音と同時に身を乗り出せるはずがない。
大山悠輔は大飛球が甲子園の青空に打ち上がった瞬間、一塁ベンチから跳び上がった。白マスク姿のまま、右手を高く掲げる。4歳下のヒーローがダイヤモンドを回り終えると、誰よりも前のめりで歓喜の声をぶつけた。
「当たり前のことじゃないですかね。もちろん自分が出ていないというのはありましたけど、チームでつながっている訳ですし。普通というか……当たり前のこと」
主将はその日、野球少年少女にも負けない純真無垢な笑顔で「4番三塁・佐藤輝明」の逆転満塁弾に興奮していた。
開幕から不動だった「4番三塁・大山」がスタメン表から消えたのは5月2日、広島戦のことだ。背中の張りが原因だった。代役はそれまで「6番右翼」で勢いづいていたドラフト1位ルーキー。矢野燿大監督が「体験入部」と表現した試用期間の初日、佐藤はプロ野球界71年ぶりとなる新人4番満塁弾で周囲の度肝を抜いた。
井上一樹ヘッドコーチによれば、大山はその日「三塁も4番も奪われました」と冗談めかしたそうだ。この時、表情はにこやかだった可能性が高い。今季初めてグラウンドに立てなかった一戦。それでも快勝を喜べるだけの器が、主将にはある。