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メイウェザーがYouTuberと対戦して110億……ボクシング界で流行する「異色対決」はありか、なしか? 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2021/06/11 17:02

メイウェザーがYouTuberと対戦して110億……ボクシング界で流行する「異色対決」はありか、なしか?<Number Web> photograph by Getty Images

6月6日、マイアミのハードロック・スタジアムで、元5階級制覇王者のフロイド・メイウェザーと超人気YouTuberローガン・ポールによる「異色対決」が実現した

 メイウェザーは翌年の大晦日に、日本でRIZINのリングに上がり、那須川天心とのエキジビションマッチに初回TKO勝ち。その後、‘19年11月には前述の通り、ローガン・ポールがKSIとの公式試合で判定負け。こういった流れを経て、今回、メイウェザー対ポールという奇想天外なマッチアップが現実のものとなった。

「ボクシングからはもう引退したけど、エンターテイメントからは引退していない。あなたは見る必要はないし、お金を払う必要もない。自分の気分が良くなることをして欲しい。私も自分の気分が良いことをするつもりだよ」 

 ポール戦前、メイウェザー自身が述べていた通り、これらの試合はボクシングという形を借りたエンターテイメント。そう割り切れる人はいいのだが、一方で居心地の悪い思いをしているボクシングファンは世界中に山ほどいるはずである。

 メイウェザー対マクレガー、ポール対KSI、メイウェザー対ポール、さらには4月17日に行われたローガンの弟ジェイクと元MMA ファイター、ベン・アスクレンの対戦でも、実績あるボクサーたちの試合が前座に組み込まれた。

 今回の興行でも元世界スーパーウェルター級統一王者ジャレット・ハード(アメリカ)、元世界スーパーミドル、ライトヘビー級バドゥ・ジャック(スウェーデン)の試合がアンダーカードに組まれ、まるで“添え物”扱い。メイウェザーの前座ならまだしも、YouTuber対決のアンダーカードに世界王者が登場したこともあった。こういった状況に嫌悪感を示し、「世界タイトルマッチを“前座”に使うとは何事か」と残念に感じているファンは多いことだろう。

“セレブリティ・ボクシング”は「ありか、なしか」

 筆者個人としては、一連の“セレブリティ・ボクシング”には反対ではない。有名なモハメド・アリ対アントニオ猪木を先頭に、業界の垣根を越えたカードはこれまでにもたくさんあった。最終的にボクシングに何らかの恩恵があるマッチメイク、中身であればOKだろうと考えている。とてつもないフォロワーを抱えるインフルエンサーがメインイベントを務める興行に、実力のあるボクサーが出れば、その選手にとっても知名度と金銭面の恩恵は大きいはずだ。

 ポール兄弟の試合を見た人たちの中で、一部でもボクシングファンになってくれればそれはポジティブなこと。そうはならなくとも、興行が成功し、Showtime、DAZN、Trillerといった中継局の懐が潤い、それが今後のボクシング中継に生かされるのであれば業界にとっても旨味はある。

「ボクシングへの冒涜」「安易な金儲け」といった声も理解できるが、アメリカのボクシングはもともとビジネスの趣が強い。それをより極端な形で行っているのが、一連のインフルエンサー対決をはじめとするセレブリティ・ボクシングだということだ。

【次ページ】 まるでサーカスのような空気感

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