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メイウェザーがYouTuberと対戦して110億……ボクシング界で流行する「異色対決」はありか、なしか?
posted2021/06/11 17:02
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Getty Images
“期待外れ”と嘆くべきか、“予想通り”というべきか――。
元最強王者対YouTuberという奇妙なボクシング・エキジビションマッチを見て、どう判断すれば良いのかわからなかったというファンは多かったのかもしれない。
メイウェザーが“素人”相手に引き分け
6月6日、フロリダ州マイアミのハードロック・スタジアムで行われた一戦で、元5階級制覇王者のフロイド・メイウェザーとローガン・ポールは8ラウンドを戦い抜いた。YouTubeの登録者数は2320万(6月11日時点)という莫大なフォロワーを持つポールは序盤こそ元気だったが、3回ごろからスタミナ切れで沈黙。中盤以降はケタ違いの技術、スピードを持つメイウェザーが一方的に追い詰めていったが、44歳になった“レジェンド”も体重では約16キロ、身長では約15センチも上回るポールをKOするまでには至らない。
異色のバトルはこうして山場もほとんどなく、観客のブーイングの中で終了ゴングを聞いた。10オンスのグローブ着用、ヘッドギアなしで行われた戦いだったが、決着はKOのみ。公式試合ではないために判定での勝者はなし。様々な意味で消化不良の結末となり、観客、テレビの視聴者はフラストレーションを感じたことだろう。
「楽しかったよ。私はもう21歳ではないことに気付いて欲しい。彼は力強く、タフで、私が思っていたよりも上だった。驚かされたよ」
常に傍若無人なメイウェザーだが、試合後は珍しく少々恥ずかしそうにしているようにも見えた。ポールはプロボクシングのキャリアは1戦のみで、その1試合では同じく人気YouTuberのKSI(イギリス)に判定負け。ほとんどの関係者がメイウェザーが中盤ごろにKOすると見ていた戦いで、“素人”相手にずるずるとラウンドを重ねたことはバツが悪かったのかもしれない。
ボクシング界で流行する「異色対決」
最近はこうした業界、世代を越えたエキジビションマッチ、異色対決が流行となっている感がある。その発端となったのは、やはりメイウェザーだった。
きっかけは2017年8月、それまで49戦全勝だったメイウェザーが、プロボクシングではまったく実績のないUFC王者のコナー・マクレガー(アイルランド)と対戦して10回TKO勝ちした戦いだった。信じがたいことにネバダ州アスレチックコミッションが認可したために公式試合となったが、興行的にも大成功を収めたこの一戦以降、「何でもあり」に拍車がかかっていった印象がある。