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メイウェザーがYouTuberと対戦して110億……ボクシング界で流行する「異色対決」はありか、なしか?
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2021/06/11 17:02
6月6日、マイアミのハードロック・スタジアムで、元5階級制覇王者のフロイド・メイウェザーと超人気YouTuberローガン・ポールによる「異色対決」が実現した
ただ……ボクシングの形を借りた一連のイベントが、あまり頻発されて欲しいとはやはり思わない。異色のマッチアップは話題性ゆえに大イベントになるものの、技術的な下地には欠ける。メイウェザー対ポール戦も、見どころは身体の大きな選手を倒せるかどうかだけ。まるでサーカスのような空気感があった。このような緻密さと格式のない興行を頻発すれば、長年のファンの本格的な怒りを買い、世間からのボクシングに対する信用も失いかねない。
メイウェザー「この試合は合法の銀行強盗みたいなもの」
筆者や一部のファンの思惑を他所に、YouTuberが絡んだ“セレブリティ・ボクシング”はもうしばらく続いていくだろう。登場選手たちのキャラクターの濃さと知名度ゆえ、少なくとも現時点でビジネス面の成功が約束されているからだ。
今回のメイウェザー対ポール戦もグーグルやツイッターのトレンド入りし、NBAのプレーオフやMLBのゲームを上回るほどの話題を呼んだ。PPV売り上げも好調と見られており、もともと「この試合は合法の銀行強盗みたいなもの」と豪語していたメイウェザーはこの1試合で5千万ドルから1億ドル(日本円にして約54億~110億円)を得るという。一方、PPVの歩合から10%を得るというポールの報酬も最終的には数千万ドルに達するはずだ。
今戦に限らず、最近のYouTuberファイトは軒並み優れた興行成績だと伝えられている。今夏、Showtimeと複数戦契約を結んだジェイク・ポールとUFC王者の対戦は再びビッグビジネスになるはず。ボクサーとして3戦3勝の成績を残し、ローガンより一段上の技量を持つ弟ジェイクがその後にメイウェザーと対戦となれば、とてつもない話題を呼ぶかもしれない。
フューリーらのビッグカードがあるが……
これらのイベントが、7~8月に予定されるタイソン・フューリー(英国)対デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)、エロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)対マニー・パッキャオ(フィリピン)といったボクシングのビッグカードよりも優れたPPVの数値を叩き出すとすれば、やはり肯定的には捉えがたいのも事実ではある。
こういった傾向は一体いつまで続くのか。世間が異色のファイトに飽きるまでか。それともボクシング界に次の超スーパースターが出現するまで変わらないのか。その答えが見えてくるまで、長くボクシングを愛してきた一部のファンは、心にひっかかりを覚えながらこのスポーツを見ることになるのかもしれない。
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