オリンピックPRESSBACK NUMBER

現役スポーツドクターに聞く“東京五輪ボランティア” 「ネガティブな行為に見られるかも…」から“0円で5日以上勤務”への違和感まで 

text by

長田昭二

長田昭二Shoji Osada

PROFILE

photograph byAFLO

posted2021/05/31 11:00

現役スポーツドクターに聞く“東京五輪ボランティア” 「ネガティブな行為に見られるかも…」から“0円で5日以上勤務”への違和感まで<Number Web> photograph by AFLO

首都圏で診療に当たるスポーツ医、もしくはスポーツ関連の医療に当たっている5人の医師に、五輪をどう捉えているのかを聞いてみた

 この二人は「条件付きで開催可」といったところだが、最後の一人の意見は明快だ。

「4年に一度の祭典だし、そもそも開催可能なのだから開催すべき」(E医師=50代、脳神経外科、民間病院診療部長)

 ちなみに、A医師とD医師の経営するクリニックを除く3人の勤務する病院は、コロナ患者を受け入れている。コロナ患者が身近にいても、危機感には温度差があるようだ。それは、次の「医療崩壊も近いと言われる中、五輪への協力を要請されることをどう見るか」という質問への回答からも見て取れる。

「中止すべき」と回答した2人の医師の回答から紹介する。

「なぜ開催の2カ月前なのかがわからない」

「いまは全力でワクチン接種を進める時期。医療従事者の多くが、このパンデミックを終わらせるには、ワクチンによる集団免疫の獲得しかないと考えている。五輪開催が絶対に避けられないものなら選手やスタッフを守るための医療要請は当然だし、医療者も全力で協力する。しかし、五輪は“人の決断”で中止ができる。選手を応援したい気持ちはもちろんあるが、究極的にはスポーツ興行であるイベントを、パンデミックを急拡大させる恐れがあるこのタイミングで行うことに正義はない」(A医師)

 もう一人の「開催否定派」であるB医師は、別の角度からの疑問を呈する。

「医療者への要請の時期が、なぜ開催の2カ月前なのかがわからない。もっと早い段階で参加の依頼(公募)をしたうえで、参加の意向を示した医師に対して開催が近づいた時点で、『この状況下でも参加する意思があるか』を再確認するのが本来あるべき姿。それで参加を表明する医師が不足したなら再公募すればいい」

 つまり、医療提供体制の準備が遅すぎる、ということだ。

 これに対してC医師とD医師はほぼ同じ意見だ。代表してD医師の声を紹介する。

「コロナに対応する医師とオリンピックを手伝う医師は基本的に別なので、要請すること自体は構わない」

 ただ、C医師はこうも言う。

「病院はコロナ対応で業務が格段に増えており、人手不足、医師不足であることは事実。この状況で五輪側が“5日以上の勤務”を条件として提示するあたりは現実的ではなく、違和感を覚える」

 最後にE医師の意見。

「基本的に医療崩壊とは思っていない」

【次ページ】 五輪に参加して「ネガティブな行為に見られるおそれ」

BACK 1 2 3 4 NEXT
#東京五輪
#オリンピック・パラリンピック

他競技の前後の記事

ページトップ