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現役スポーツドクターに聞く“東京五輪ボランティア” 「ネガティブな行為に見られるかも…」から“0円で5日以上勤務”への違和感まで
text by
長田昭二Shoji Osada
photograph byAFLO
posted2021/05/31 11:00
首都圏で診療に当たるスポーツ医、もしくはスポーツ関連の医療に当たっている5人の医師に、五輪をどう捉えているのかを聞いてみた
五輪に参加して「ネガティブな行為に見られるおそれ」
これに関連して、こんな質問にも答えてもらった。
「医師が五輪のサポートに参加することについて、どんな不安を持ちますか」
これまでの回答から見て、E医師が「まったく不安は感じない」と答えたことは納得できるし、ある意味“スジ”が通っている。
一方で「世間が医療を見る目」を危惧する意見もある。
「『医療現場には余裕があるんだ』という印象を与えることで、ワクチンを接種していない多くの国民のマインドが緩み、感染状況が悪化するのが恐い」(A医師)
「現在の状況で五輪のサポートとして参加することが、他者から見てネガティブな行為に見られるおそれはある。国民感情としては、五輪を手伝うよりもワクチン接種に従事することを優先すべきと思うだろう」(B医師)
確かに、ワクチン接種に歯科医師や薬剤師の手も借りようという段階になって、同じ医師免許を持ちながらスポーツドクターだけが別枠として計上されるのは、やはり首をかしげたくなる点は否めない。
「無報酬」であることの問題は?
ところで、今回の五輪への医師のサポートはあくまでボランティアであって「無報酬」だ。これについてスポーツドクターたちはどう思うのか訊いたところ、これまでの回答とは異なる傾向を示した。A、B両医師に加えて、この二人と反対の姿勢を示してきたE医師が「無報酬でいい」と答え、C医師とD医師の二人が「報酬は支払うべき」との声を寄せたのだ。
ただ、やはりA、B両医師とE医師の意見は、同じ「無報酬で構わない」という回答にも微妙に違いがある。
「無報酬という条件で応募する医師がいるならそれで構わない」(A医師)
「無報酬でも参加したい医師は多数存在するから」(B医師)
「ボランティアだから無報酬で構わない。報酬が発生したらボランティアとは言わない」(E医師)
残る二人の意見も訴求力がある。
D医師の「責任のある仕事である以上、対価は支払うべき」という回答を補足するようにC医師が語る。