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二軍から復帰、巨人・戸郷翔征がまた勝てるようになったワケ…あの沢村賞投手もハマった“ツーシームの罠”とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/05/24 17:04
5月18日、二軍から復帰2戦目で今季3勝目をあげた巨人・戸郷
長期のスランプに悩んだ涌井は、その後、新天地を求めて14年にロッテに移籍。翌15年には15勝で最多勝利のタイトルを奪って見事に復活を果たし、楽天に移籍した20年にも11勝で4度目のタイトルを手にしている。
真っ直ぐと同じ握りでボールの縫い目への指の掛け方で変化させるのがツーシームだが、実際にはリリースの瞬間の指先の力の入れ具合や、それこそ腕の振り方などで変化は大きく異なってくる。試合で使えるボールとするためには、それぞれが試行錯誤を繰り返して工夫を凝らすわけだ。
“次世代エース”の必須の課題かもしれないが……
その中で堀内さんが語るように一番、簡単なのは肘を下げて投げることだ。ただ、ツーシームの曲がりを意識し過ぎると無意識に肘が下がってフォームを崩すきっかけになる。そのことがこのボールを自分のものとしていく過程の一つの難問で、実は戸郷もそこで少し回り道をしてしまったということなのだろう。
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「ちょっと腕が遠回りするというか、(ツーシームの)その曲がりをイメージすると、そうなっていた。(自分の持ち球から)消した訳じゃないです。いい感じになっていけば、いつか戻すんじゃないかなとは思います」
メジャーではいまはほとんどの投手が、ツーシームを投げ、スライダーやカットボールの対となる球として当たり前の球種となっている。
戸郷もまた、いずれはツーシームを自在に操れるようになることが、“次世代エース”への必須の課題なのかもしれない。ただ、いまは逆にこの球を投げる弊害の方が大きい。約2週間の抹消期間でそのことに気づき、あえて“封印”する決断をしたということなのである。
「(ストレートが)シュート回転する。僕は真っ直ぐに照準を置こうと思っているので、ちょっと封印させていただいた」
原点は150kmを超える真っ直ぐに尽きる。そのことに気づいた結果の戸郷の選択は、間違いなく正解だったはずである。
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