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二軍から復帰、巨人・戸郷翔征がまた勝てるようになったワケ…あの沢村賞投手もハマった“ツーシームの罠”とは?
posted2021/05/24 17:04
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Sankei Shimbun
多分、その選択は正解なのだろう。
5月18日に東京ドームで行われた巨人対広島戦。この試合に先発した巨人の戸郷翔征投手は6回97球を投げて、広島打線を4安打2失点に抑える好投で今季3勝目を記録した。
その試合後の会見で、今季から取り組んでいる新球・ツーシームについて聞かれたときだ。
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「きょうは1球も投げていないです」
戸郷の答えだった。
「打者の手元で少し動かして、1球で仕留められる」
プロ3年目の今季。菅野智之投手の後を継ぐ“次世代エース”として2桁勝利を期待される右腕が、ステップアップの武器として選択したのが、ツーシームの習得だった。
「打者の手元で少し動かして、1球で仕留められる。まだ早いと言われるかもしれませんが、いまの内に習得して、いつでも使えるような状況にしたい」
キャンプ中の2月には、ある取材にこう挑戦の理由を話していた。
その後、キャンプからオープン戦で試行錯誤を繰り返しながら、この新たな球種を武器として臨んだシーズン。開幕2戦目のDeNA戦で先発すると7回まで106球で投げきり4安打6奪三振の1失点で今季初勝利をマーク。2度目の先発となった4月3日のヤクルト戦では8回119球を投げて5安打2失点、7奪三振の好投(試合は2対2の引き分け)を見せ順調にシーズンのスタートを切った。
ところが同10日の広島戦で4回も持たずに降板。さらに1登板を挟んで24日の同じく広島戦で4回4失点KOされると、翌25日には原辰徳監督から二軍で再調整指令を出されたのである。