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鈴木優磨が悩んだ“ストライカーのジレンマ”「でも俺は自分のためだけにサッカーをするのは、無理だなって」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph bySSTV
posted2021/05/20 17:02
ベルギー2シーズン目となった今季は17得点をマークし、「クラブ年間MVP」を獲得した鈴木優磨(25)
「基本的には、パスを出したらもう返ってこないですね。みんな点を獲りたいという気持ちが強いから。特にベルギーリーグは、選手の入れ替わりが激しくて、いいプレーをしたらすぐに良いクラブへ行ける“チャンス”に溢れている。ましてやシント・トロイデンのようなチームには、有望で野心家の若手が揃っているので、『ゴールを獲りたい』『ステップアップしたい』という想いがとても強いんです。
それは選手であれば当たり前だし、同時に僕はチームの勝利に貢献したいという気持ちもあるから……。なので最初は『チームと自分とのバランス』っていうのがすごく難しかったですね」
――そういうなか、自分の存在価値を示していくうえで、どんなことを意識していましたか?
「とりあえず、基礎となるプレーを意識していました。周囲からも『こぼれ球に詰めろ』という声もあったので。極端にいえば、ラッキーなところを狙うしかない。いつこぼれて来るかもわからないけど、狙い続ける。そういう意識はしていました」
――その一方で、チームのためのプレーは……?
「なかなか評価されづらいけどやらないわけにはいかないので、もうやり続けました。そうしていたら、冬に加入してきたベテラン選手2人がそこをすごく評価してくれたんです」
――ストライカーのジレンマですよね。得点がもっとも高い評価を得られるけれど、それ以外のプレーはなかなか評価を得づらい。
「スタメンで出ている選手には最低2桁のゴールが求められる。得点とかアシストとか目に見える結果以外、基本的には認められないですよね。でもやっぱり、汗をかくプレー、ハードワークすることも大事なんです。こっちは得点だけを求める選手が多いから、ハードワークできる選手はなお受けがいいんです」
ベルギーでは「本能のままにサッカーをしている感じ」
――そもそもベルギーのサッカーは、日本とはどう違いますか?
「とにかく縦に速いですね。日本みたいに、5本も6本も7本もパスを繋がない。2本でゴールに行けるなら、2本で行きます。それでたとえ失敗しようと、ラストパスの確率が10%だろうと。たとえば横パスを出せばその確率が100%になったとしても、10%を狙います、確実に」
――なによりもまず、ゴールへ向かおうとする。
「パスが1本通ったらゴールだよって考えるリーグです。だから展開もすごく速い。ある意味、試合は『行ったり来たり』なんですね。チームの戦術がないというわけではないけど、選手の個に頼っているチームが多いので、ときどき化け物みたいな選手がいます」
――ある意味、原始的なサッカーなのかもしれません。
「そうですね、本能のままにサッカーをしている感じ。自分を表現する場所という感じがします。