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鈴木優磨が悩んだ“ストライカーのジレンマ”「でも俺は自分のためだけにサッカーをするのは、無理だなって」
posted2021/05/20 17:02
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
SSTV
「年齢的な部分が大きい。正直、もう残るという選択肢はまったくなくて。ここはどんな状態でも勝負しに行かなくちゃいけない」
それ以前にも複数のオファーが欧州から届いていたなかで、2019年の夏、7カ月にも及ぶリハビリ中だった鈴木優磨はそう宣言して、鹿島アントラーズからベルギーのシント・トロイデンへ移籍した。
そして、2シーズンが終わり、鈴木は今、シント・トロイデンからの移籍が決定的だ。今季は34試合に出場し17得点をマーク。1部残留に貢献している。その活躍に数十のクラブから関心が寄せられているという報道もある。鹿島を出立したときの言葉を体現するようなステップアップが実現しそうだ。
25歳のストライカーは、ベルギーで過ごした2シーズンで何を思ったのか? シーズンが終わりに差し掛かった某日、ベルギーとオンラインを繋ぎ、本人に話を聞いた(全2回の1回目/#2に続く)。
◆◆◆
――ベルギーでの2シーズンが終わろうとしています。今季は17得点をマークしました。昨季との違いを教えてください。
「ベルギーへ来る前は、環境にもすぐに馴染めるだろうと思ってたんですけど、実際は違いましたね。想像していたこととのギャップも多かった。俺自身もほぼ1年間リハビリをしていて公式戦から離れていたというのも大きかったと思います。
あとはベルギーのサッカーに慣れるのも大変だった。なんかこう、今まで自分のストロングポイントだと考えていたところが、なかなか通用しないなというのを感じて……。これは色々と変えていかないといけないなと、1年目のシーズンが終わって深く考えましたね」
「手放す」のではなく「どう通用させるか?」
――日本で培ったストロングポイントが通用しなかった?
「ペナルティエリア内での動きというのが自分の良さだと思っていたけど、なかなか上手くいかなかった。でもその動きこそがストライカーにとっての勝負の醍醐味なんです。だから手放すのではなくて、どうやって通用させるかを考えました。
それ以外でも、日本ではDFに直接身体を当てられても負けなかったのに、ベルギーには俺よりも強くていい選手は山ほどいるんで、飛ばされることが増えました。だから、いかに相手(DF)に触らないで、フリーでボールを受けられるかというのを考えるようになった。今のピーター・マース監督からも就任当初(2020年12月)は、スペースを見つけて動くことを強く要求されました」
「基本的には、パスを出したらもう返ってこないですね」
――鈴木選手は、鹿島時代に「徳を積むような汗をかくプレーがゴールにつながる」という話をされていました。欧州では必ずしもそういう選手ばかりではない印象があります。実際にベルギーではどうでしたか?