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“Fワード”で怒りをぶちまけ、チームに謝罪…スペインGPの舌禍でルーキー角田裕毅が学んだこととは
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/05/14 06:00
スペインGP決勝前のグリッド上でヘルムート・マルコに激励される角田。「愚かな発言」については許してもらえたようだ
マシンやエンジンは人間が作り、組み立てるものだから、そこには若干の個体差は発生する。さらに物理的に最新パーツが1台分しか用意されない場合には、どちらか一方だけがそれを使用することはある。しかし、その場合は2人のドライバーに了解を得ることが基本であり、チームが故意に2台のマシンに差をつけることはないことは、この世界の基本的原則。角田の「同じマシンなのか少し疑問」という発言は、その基本的原則に対して異議を唱えたということで、海外のメディアが色めきたつこととなった。
大人たちに許された角田
さらにこの日、角田はもうひとつ、謝らなければならないコメントを発していた。それは予選でQ1落ちした直後のチームに向けられた無線だった。
「I can't drive f○cking this car」(こんなク○マシンじゃ戦えないよ)
1台のマシンを作るにはパワーユニットも含めれば、開発・製造を含めて、1000人以上が携わっている。そのステアリングを握るドライバーは、彼ら1000人の代表でもある。優勝したドライバーがサーキットで一緒に戦うエンジニアやメカニックだけでなく、遠く離れたファクトリーで仕事している多くのスタッフに向けて、感謝の言葉を送るのはそのためだ。
そんなスタッフたちを傷つける発言を、角田はしてしまった。
これには、角田の才能を買い、レッドブル・ジュニアチームに加入させたヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)も「愚かな発言」と一刀両断に切って捨てた。
ただし、マルコは同日、SNSを通してチームに謝罪した角田を「もう終わった話」と許し、決勝スタート前のグリッド上で笑顔で激励していた。
さらに、異なるマシンに乗っているのではないかと疑われたチームメートのピエール・ガスリーも冷静な対応を見せた。
「あれは、Q1落ちした直後のかなり感情的なタイミングでのコメント。精神的にコントロールできていないときの発言だと僕は受け取っている。ユウキはまだ若く、しかもルーキーだ。僕は彼がこれからいろんなことを学んで、成長していくと信じている」
一流のドライバーを目指すのなら、コース上でのテクニックだけでなく、コース外での振る舞いもレベルアップさせなければならない。そして、それをスペインGPで最も強く味わったのが、角田だったのではないだろうか。