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東京五輪マラソンのカギは「転倒もありえる」“ジグザグ道”に? 北大陸上部員だけが知るコース難所の攻略法とは
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byYumiko Yanai
posted2021/05/04 17:01
コース北大に入ってすぐのジグザグ道の一部。第二農場に突き当たり、ここを右折する
ライバルの余力が見えそうなジグザグコース
1500mのベストタイム3分42秒32を持ち、ユニバーシアード出場を目指す高橋さんも、「カーブに苦手意識を持っている人もいるので、キーポイントになると思う」と言う。さらに、高橋さんは「曲がった後が建物に遮られて見えない箇所が多いので、曲がった先でスパートをかけて引き離すという戦略にも使えそう」と指摘する。この作戦を使うと、後ろの選手が曲がり角にたどり着いた時には前の選手との差が広がっているので、ダメージを与えることにもなる。
高橋さんは「1キロ3分を切るペースの時、曲がり角では身体を斜め45度くらいに傾けないと減速してしまうかなという感覚」とも指摘する。特に、陸上トラックと逆向きの右カーブを嫌う選手が多いので、そこで失速する選手が出てくるかもしれないと予測している。
1500m3分58秒07のベストを持つ宮瀬さんは、「カーブで減速するのが苦手な選手は、そこで体力を取られてしまう」と言う。さらに「曲がる時のコース取りを観察して、内側のぎりぎりを攻めているようだと疲れてきているのかなとか、精神的に余裕がないのかなということを推察できる」と加えた。ジグザグ部分ではライバルの余力がどれくらいなのかが見えやすいというのだ。
勝敗を分けるのは「メインストリート」?
ここまでは注目度の高いジグザグ道について述べてきたが、実は北大陸上部の3選手が勝敗を分けるカギを握ると見ているエリアが別にある。ジグザグ道を終えた後にある約1キロの直線(通称「メインストリート」)だ。この道は両脇に背の高い木々が生い茂り、直射日光を浴びることがほとんどなく、スピードアップをしやすい状態だ。
しかも川瀬さんによると、風の影響がありそう。「メインストリートを北から南に向けて走る時は経験上、追い風になることが多く、追い風ならここで急にペースアップする可能性がある。ここで離されてしまうのか、ついていけるのか、自分がペースを上げて離すのか。3パターンあると思う」というのだ。