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「ハハハ。一緒ですね」日本の名キッカー・五郎丸歩と中村俊輔がお手本にしていた“意外な競技”とは?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTadashi shirasawa
posted2021/04/27 11:01
日本が誇る2人のプレースキッカーのセッションが実現した
五郎丸 エディー・ジャパンの4年間、メンタルコーチと一からルーティンをつくっていって、自分が触れられるものであったり、自分の行動でコントロールしていくことで身につくようになっていきました。
中村 行動でコントロールするというのは、よく分かります。生活の流れや、リズムがルーティンそのものにつながっている感じがする。人それぞれだと思うけど、僕は朝早くクラブハウスに来てジムで体を動かして全体練習して、風呂の後にストレッチをやって……それをどれだけ自分のものにできているかどうかで決まってくる。
五郎丸 確かにそうですね。自分にプラスになることを日常でやっていく。非日常を日常にしていくのは凄く難しいです。でもそれをやっていかないとキックの成功率も上がっていかないんじゃないか。そう信じてやっています。
中村 試合の前に、勝負は決まっている、と僕は思っていますね。
蹴るときに意識するのは「どこを見るか」
五郎丸 キックの練習自体もルーティンの一つになっています。自分は8カ所からしか蹴らなくて、それもすべて1本ずつ入れば8本で終わり。一日で多く蹴るというよりも、日々少しずつ修正しながら、自分が一番いい形に少しずつ戻していくっていう感じでしょうか。
中村 面白いですね。僕は昔、納得いくまで蹴らないと気が済まなかった。今は10本、20本と決めて、集中して蹴る感じに近いかな。でも、練習ではどうしても難しいことをしたくなるタイプなんですよ。キーパーの動きの逆を取りつつ、すごいところを狙ってやるぞっていう欲が湧いてきたり……。
ただ、難しいことをやろうとするのは練習だけ。試合は決めることが優先になるので、ゴールにより可能性のあるほうを選択しますけど。五郎丸さんは、どんなことを意識して蹴っています?
五郎丸 右キッカーだと左に外れやすいっていうデータがあるんです。大きな試合になればなるほど力んで左側に飛んでいってしまうのだ、と。だから8カ所から力むことなく、ゴールの右半分を狙う練習をしています。
中村 どこを見る、というのは僕も意識しているところかな。
五郎丸 俊輔さんはどのように?
2人の意外な共通点は「ボウリング」?
中村 生活の身近なところにもそのヒントがあったんです。家族とボウリングをやったときに奥のピンのほうじゃなくて、レーン上に描いてある▲マークを見て投げるとうまくいったことがありました。この感覚をFKでも取り入れてみようと思って、壁の右から2人目の頭の上だけ見て蹴ってみるとか。遠いGKを見てうまくいかなかったら今度は近いほうの壁の一点を見て蹴ってみる。それで修正できたりするんです。