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五郎丸歩が中村俊輔に語っていた“ルーティンポーズの意味”「メンタルと『戦う』という感じではないんです」
posted2021/04/27 11:02
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Tadashi shirasawa
【初出:Sports Graphic Number 894号(2016年1月21日発売)「世界基準のキック論。」/肩書などはすべて当時】
中村 実は、きょうは五郎九さんの言葉からヒントをもらったんですよ。
五郎丸 えっ、そうなんですか?
中村 ラグビーのボールを蹴る際、どこを狙うのか尋ねたときゴールの先にある「奥の目印」と言われたじゃないですか。その感覚はこれまでの僕になくて、やっぱりゴールとか壁とか手前のほうを見るんですよね。ひょっとしたらゴールの奥を見ることもアリなんじゃないか、と。奥の低めのところを見ていれば、いい具合に落ちて枠のなかに行きそうだと感じました。
五郎丸 ラグビーの場合はどう自分にフォーカスして蹴れるかというところがやはり重要。蹴った瞬間に入るか、入らないかは感覚として分かるので、何よりも「蹴ったときの感覚」を大切にしています。だから外れると思って入っても全然嬉しくない。自分が思っているとおりに体が動いてすべてがうまくいって初めて、良かったという感覚になりますね。
中村 蹴った瞬間に入るかどうか、分かるというのは同じかな。自分のカタチじゃなくて点が入っても、それはそれでゴールだから僕の場合は喜ぶ。でもすぐあとで修正しなきゃっていう気持ちにはなる。五郎丸さんは自分のプレーの映像をあとになってチェックするタイプ?
どちらも「悪いプレーは見ない」
五郎丸 いいプレーしか見ないですね。失敗したプレーとか、負けた試合とかは絶対に見ません。あんまり悪いイメージをつけても意味ないんじゃないかっていう考え方なので。
中村 僕も、悪いプレーは見ない。プレーは全部覚えているつもりなんで、失敗したことは試合の帰り道にああすれば良かった、こうすれば良かったなんてあれこれ反省はします。でも家に着いたら逆にいいシーンだけを頭に浮かべて、そのイメージを持ったまま練習で刷り込ませていくっていう作業になるかな。