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失明のおそれを伝えていたのに竹刀で… 空手・植草歩の告発で明らかになった「変われない組織」の実態 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2021/04/02 17:02

失明のおそれを伝えていたのに竹刀で… 空手・植草歩の告発で明らかになった「変われない組織」の実態<Number Web> photograph by Getty Images

KARATE1プレミアリーグ2019マドリード大会での植草歩。東京五輪でもメダル有力候補選手と考えられている

積極的なメディア露出は空手の未来のため

 植草は、空手の世界では際立ってメディアの露出も多い。ときにそれに対して批判的な話も聞く。ただ、そこには植草の思いがあるのではないか。2015年、大学を卒業して社会人となった1年目の取材で、植草は競技をやめざるを得ない先輩たちの姿に触れつつ、語った。

「多くの人に空手を知ってもらうことで空手をやる人も増えるし、理解してくれる会社も増えて環境もよくなっていくと思う。空手がもっとメジャーになっていくためにも、テレビとかに出させてもらって広がっていけばと思っています」

 さらに、この時点で空手が採用されると決まっていなかったオリンピックについても触れている。

「オリンピック種目に入る、入らないは大きいですよね。2020年の東京オリンピックで採用されるなら、自分は続ける予定でいます」

「昨年(2014年)の世界選手権で3位になりましたけど、『たかが世界選手権』と言われちゃうんですよ。悔しいですよね」

 活躍を期待されるからこそ責任を背負う覚悟がそこに感じられたし、また責任を背負わされる面もあっただろう。

 2019年12月には新たな指導者に師事するようにもなったのは、オリンピックを視野に自身の向上を志してのことにほかならない。

 そうしたことも思いつつ、オリンピックを控え、こうした事態となったことを気の毒に思う。

明らかになった組織内の「自浄作用のなさ」

 これまでもこうした事態が起きたとき、組織内で覆い隠すような動きが見られ、そのときどきで自浄作用のなさが指摘されてきた。今回も植草が相談してもいっこうに事態は動かなかった。

 香川氏は、以前はナショナルチームの監督と強化委員長を兼任し、2015年以降は監督からは退いたが、その後も監督の上に立つ強化委員長である。きわめて強い立場にいる。過去の事例同様、内部で解決へと進めなかった点が踏襲されているようであり、変わり切れない組織のあり方を、あらためて突き付けられることになった。

 どのような解決に至るのかはまだ見えない。ただ、よりよき結末を祈りたい。

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