オリンピックへの道BACK NUMBER
「現役時代はその必要性を感じなかった」 レズビアンを公表した滝沢ななえが語る“言う言わないの自由”
posted2021/03/07 06:04
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
「何か一歩踏み出すという行動をするのが大事なんじゃないか、そういうところは伝えたいと思います」
バレーボールに打ち込み、現役生活から退いた現在はトレーナーとして活躍する滝沢ななえは、柔らかな、でも確固とした芯を感じさせる表情とともに語った。
バレーボールのファンであれば、その名前を知っていることだろう。
その足跡を簡潔にたどりたい。
滝沢は八王子実践中学・高校で6年間、バレーボールに打ち込んだ。八王子実践は高校バレー界を越えて名前を知られる屈指の名門校である。滝沢は全国大会にも出場し、高校3年生のときには主将を務めた。
「監督が『滝沢がキャプテンをやれ』と。八王子実践は監督がキャプテンを指名するんです」
卒業後、パイオニアレッドウィングスに進む。その後、上尾メディックスでプレーし、2013年に引退。その後、トレーナーとなった。
「ご縁と言うところが大きかったですね。『ジムをオープンするので立ち上げのメンバーとして手伝ってくれないか』と声がかかって、トレーナーという職に興味を持ちました」
ジムに勤務したのち、独立し、今日に至っている。
滝沢は2017年、出演したテレビ番組内でレズビアンであることをカミングアウトしたことで注目を集めた。
「何かマイノリティの方たちに伝えることはできるのかな」
「出演のオファーがあったときは、カミングアウトするとかそういう話ではありませんでした。打ち合わせのとき、『もし彼氏や旦那さんがいるなら、使いたい』みたいな話の流れで、同性のパートナーがいます、と話したら、番組にしていいですか? という流れでした」
その下地となった出来事があった。
「勤めていたジムの代表には私がセクシャルマイノリティであることは伝えていました。たわいもない会話をしているとき、『トレーナー以外に何か、ななちゃんにできることがあるといいよね』と言われて、何かマイノリティの方たちに伝えることはできるのかな、それが私にできることなのかなと話していました」
それもまた、縁がもたらした1つであったかもしれない。