Number ExBACK NUMBER
《あの見た目で日本代表なんて》SNSで目にした差別ツイートに鈴木武蔵が返信したこと「お父さんの血がなかったら…」
text by
鈴木武蔵Musashi Suzuki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/04/01 11:07
日本代表に招集されても続いた激しいバッシング。怒りも込み上げてきたが、冷静に自分の本心をSNSに投稿した
「鈴木武蔵選手みたいになりたい」
僕もようやくネガティブなことを受け入れられるメンタリティーになったけど、それができずに、心の底から傷ついて、ときには一生消えないような傷を負ってしまう人もいる。
言葉はときには助けにもなるし、人を傷つける刃にもなる。その自覚をもっている人もいれば、もっていない人もいる。いろんな人が混在する社会のなかで、今まさに苦しんでいる人もたくさんいる。
まして子どもなら、より深い傷を受けてしまいかねない。それを経験してきた人間だからこそ、僕が発信をすることに説得力があると思う。
僕にとってサッカー日本代表は、文字どおり日本人の代表として戦う誇り高き場所だ。 そこに選ばれるようになって、日本人としての誇りはものすごく大きなものになった。
そして、日本代表に選ばれるようになると、僕のところに、ハーフの子どもたちからのメッセージがより多く届くようになった。
「友達の子どもがアフリカ系のハーフで、その子が『鈴木武蔵選手みたいになりたい』と言っていたよ」
「僕はナイジェリアとのハーフです! ずっと目標にしています」
僕自身も、テニスの大坂なおみ選手やバスケットボールの八村塁選手、陸上のサニブラウン・アブデル・ハキーム選手やケンブリッジ飛鳥選手などが、日本を代表するアスリートとして活躍するのを見るたびに、「俺も頑張ろう」と大きな刺激を受けている。とくにケンブリッジ選手は、同じジャマイカ人の父をもち、母親同士がジャマイカで知り合いだった縁もあり、一番身近に感じる存在だ。
日本代表に入るまでの僕は、「自分がどうやったら日本人になれるか」ということばかりを考えながらやってきた。でも、実際に日本代表に入るようになると、「自分の活躍を励みにしてくれる人がいるんだ」と実感するようになった。
だから、誹謗中傷に対しても、僕は凜とした態度でいたいし、屈したくもない。この出来事をきっかけに、より自分の言動に責任をもつことを決めたんだ。
12月、僕はJリーグ組と東京五輪世代を中心に構成をされた日本代表として挑んだEAFF E-1 サッカー選手権2019の中国戦で代表初ゴールを決め、この1年を締めくくった。
【前編を見る】『おーい、ハンバーグ!』ジャマイカからやってきた少年・鈴木武蔵が浴びた言葉…認めてもらうために手にした“シッカロール”