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《あの見た目で日本代表なんて》SNSで目にした差別ツイートに鈴木武蔵が返信したこと「お父さんの血がなかったら…」
posted2021/04/01 11:07
text by
鈴木武蔵Musashi Suzuki
photograph by
Takuya Sugiyama
ベルギーリーグ1部のベールスホットで背番号10を背負うストライカー、鈴木武蔵。先日の日韓戦とアジア2次予選モンゴル戦は怪我の影響で招集を見送られたが、森保ジャパンでは着実に出場機会を増やしている。ジャマイカにルーツを持ち、日本で育ってきた鈴木にとって「日本代表」は特別な場所。小学校時代に受けたイジメ、差別、プロサッカー選手になっても続く誹謗中傷のメッセージ……サッカー選手として新たなステージを突き進む鈴木が、自身の半生を赤裸々に語った(全2回の後編は、日本代表初招集後の2019年のエピソードです/前編はこちら)。
※本稿は『ムサシと武蔵』(徳間書店)の一部を抜粋、再編集したものです。
※本稿は『ムサシと武蔵』(徳間書店)の一部を抜粋、再編集したものです。
2019年11月、僕を差別する発言がSNSに上げられた。
ちょうどこのとき、僕は自宅でくつろいでいた。何気なくスマートフォンでSNSを開いたら、「鈴木選手、こんなことが投稿されています」と、サポーターの方があるツイートを送ってくれた。
「なんだろう?」と思って、そのツイートを見てみると、
<あの見た目で日本代表なんて>
という言葉が目に飛び込んできた。
「うっ!」
僕はとっさに目をつぶって、思わずスマートフォンを手放した。ショックと悲しみ、怒り。いくつもの感情が僕のなかにうごめいた。冷静ではいられなかった。心臓がバクバクしている音が聞こえる。
僕はしばらく天井を見上げ、自分に問いかけた。
「そうだよ、これまでもそう言われることはあったじゃないか。やっぱり俺のことを 日本代表として、日本人として受け入れられない人が一定数いるのは当たり前だ。日本代表で活躍できなかったら、俺の場合、見た目を言われるのはありえることだ」
必死で受け入れようとした。しかし、「俺は見た目こそ違うかもしれないけど、日本人の心をもってやってきた。いったい、どうやったら受け入れてもらえるんだよ!」
怒りと絶望の感情があふれ出てきた。しばらく呆然としたあと、ソファーに投げ出した携帯電話を再び手にした。
そして、そのツイートをもう一度見直した。不思議と最初のような感情にはならず、冷静にその文面を読めた。
「これは俺の口から何か言わないといけないな」
そんな使命感が生まれた。