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「手数料ゼロ&飲みニケーションしません」で急成長 サッカー代理人の“黒船”がJリーグのビジネス常識を破壊する?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2021/03/17 17:01
2019年に川崎フロンターレからマンチェスターシティに移籍した板倉滉。加入と同時にオランダのフローニンゲンに期限付き移籍している
今年、富永はブラジル人センターバックのブルーノ・ウヴィニをFC東京へ連れてきた。
「『Base』は各国に担当者がいて、どの選手が移籍先を探しているかが常に全員に共有されています。
僕はそのリストを持ってJクラブの強化部長に会い、『こういうFWがいるんですけどいかがですか?』と尋ねる。『物足りない。もっといいFWを探してきて』という反応だったら、さらに他候補を探す。強化部長たちと関係を築くために、毎日電話するようにしています」
クロート代理人の“牙城”を崩せるか
ここまで『Base』が日本サッカーにもたらす新常識を書いてきたが、何事も長所と短所はコインの表と裏だ。新規参入外資ゆえに、今後の課題もある。
日本人選手のメディア出演や広告契約などのマネジメント面については、主にロンドンにいる日本人社員と富永が2人で担当しており、必要に応じて外注もしている。日本の代理人事務所の方が地の利があり、きめ細かいマネジメントをできるだろう。
また、『Base』は日本人選手をドイツ市場にまだ持っていない。トーマス・クロート代理人の牙城を崩せていないのだ。
高原直泰のハンブルガーSV移籍を皮切りに、日本人選手のドイツ移籍は長らくクロートが主導してきた。日本人代理人は選手から報酬をもらい、クロートはドイツのクラブから手数料を受け取るため、協力が成立しやすいことも後押しになった。
ブンデスリーガでプレーするのが目標であれば、クロートと組んでいる事務所の方が有利だろう。ただし、『Base』としても指をくわえて見ているつもりはなく、アミン・ユネスのフランクフルト移籍などドイツ市場で少しずつプレゼンスを増している。また、『Base』としてはいきなりブンデスリーガなどの大きなリーグ、大きなチームへの移籍をしても数試合出ただけで使われなくなってしまうリスクを考慮し、「特に若い選手には『育てて売ってくれるクラブ、使ってくれるクラブ、慣れるまで我慢してくれるクラブ』をヨーロッパでの最初のステップにするようにアドバイスしている」という。
「日本の代理人の皆さんが、日本人選手をヨーロッパへ移籍させてきた。ただ、僕たちは彼らよりもヨーロッパに広いチャンネルを持っている。それを生かして日本サッカーの発展に貢献していきたいです」
競争が激しくなるため日本の代理人には緊張感が走っているかもしれないが、選手にとっては選択肢が広がるのはいいことだ。
“黒船”の襲来により、日本サッカーの常識がアップデートされようとしている。
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