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「手数料ゼロ&飲みニケーションしません」で急成長 サッカー代理人の“黒船”がJリーグのビジネス常識を破壊する?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2021/03/17 17:01
2019年に川崎フロンターレからマンチェスターシティに移籍した板倉滉。加入と同時にオランダのフローニンゲンに期限付き移籍している
「僕らは選手とアルコールで盛り上がるようなことはしてません。強化部長や高校サッカーの監督の過剰な接待も禁止。強化部長と飲んだことは一度もありません。飲み会、接待で関係を築くのが日本的なやり方かもしれませんが、うちはそれを過剰にやらない。いい契約ができたときに、お祝いをする程度です。
社内でかなり細かくコンプライアンスの規定があり、メーカーから服一枚もらうなと言われている。過剰接待が理由で他の事務所に負けても、『This is Japanese style』と報告すれば上司はわかってくれる。こういうコンプライアンスにこだわる姿勢が口コミで広まり、選手や保護者から信頼を得る要因になっています」
ここまでコンプライアンスやガバナンスにこだわるのは、『Base』の親会社がハリウッド最大手のタレントエージェンシーであることも関係している。
親会社『CAA』はウィル・スミス、スカーレット・ヨハンソン、ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニーら多くの世界的スターを抱え、イメージやブランドで商売をしている。アメリカの会社らしく、コンプライアンスやガバナンス、差別にうるさいのも当たり前だろう。不祥事を極力避けるよう社内規定が作られている。
“本社から選ばれた”エリート候補としか契約しない
ただし、いくらイメージを大事にすると言っても、代理人業は慈善活動ではなくビジネスだ。稼がなければ破産してしまう。
ビジネスにはシビアな視点が必要であり、『Base』はヨーロッパへ移籍できそうな選手としか契約しない。言い換えれば、エリート候補としか契約しないということだ。
「僕たちは選手が海外へ移籍したときにしか収益を得られません。つまり契約している日本人選手がJリーグでプレーしていうるうちは収益がゼロなんです。だからヨーロッパに行けそうな選手を中心に契約をしています」
これを実行するうえで鍵となるのは、選手の将来性の見極めだ。
『Base』は分業にこだわっており、目利きを代理人だけに頼ることはしない。本社にスカウトやアナリストなど専門家が常駐しており、彼らが映像やデータを見て厳しく査定する。