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「武道館はアイドル時代に諦めた夢」中野たむvsジュリアの“髪切りマッチ”だけじゃない、女子プロレスの“魅力”とは

posted2021/03/13 17:01

 
「武道館はアイドル時代に諦めた夢」中野たむvsジュリアの“髪切りマッチ”だけじゃない、女子プロレスの“魅力”とは<Number Web> photograph by Masashi Hara

3月3日、スターダム初の武道館大会で敗れたジュリアは髪を失い、勝った中野たむのテーマ曲が武道館に流れた

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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Masashi Hara

 メインイベントが終わると、ジュリアに勝った中野たむのテーマ曲が武道館に流れた。それはこの大会の最後に流れるのに相応しい曲だった。

“いつの間にか知らない景色”

 自身が作詞し歌っているその曲はこう始まる。

 もちろん、これは武道館のことを指しているのではない。「あの人やあの時への想いをぎゅーと詰め込んで歌わせて貰って作詞もした!」と本人はTwitterに記している。

 この曲が今回の武道館大会そのものにピタリと重なったのは、その想いがプロレスというものの大切な部分で共鳴しているからで、なぜプロレスが魅力的なのか、ということとも重なっている。歌詞の“キミ”をプロレスに置き換えてみると、プロレスそのものへのラブレターのように受け取ることもできる。

 なぜこの曲が武道館の最後に流れるのに相応しかったのか。なぜこの大会は素晴らしかったのか。プロレスの魅力と共にそれを見ていくことにしよう。

「パッションを出し続けないと」

 プロレスを見始めるきっかけは人それぞれ異なる。たまたま親が好きだった人だけでなく、たまたま目に入ったポスターでなんとなくビジュアルに惹かれた人もいるし、学校でクラスの誰かが買ってきた雑誌をたまたま見たことがきっかけの人もいる。たまたまつけたテレビで見たことがきっかけの人もいれば、何も知らないままたまたま友人に連れてこられたことがきっかけの人もいるだろう。

 そしてそのたまたまが一度きりで終わらないのは、その時に目の前に広がっていた世界が、それまでの自分が“知らない世界”だったからだ。

 妥協したり我慢したりするのではなく、相手と正面からぶつかり、全てを受けたうえで勝ってみせる。それは普段の生活では難しいこと、憧れはするものの、自分には実現不可能に思える生き方だ。この日、渡辺桃との激闘を制した高橋奈七永はこう語っている。

「1回1回、その瞬間で終わるかもしれないんだ、私の命は。だからやってるんだよ、プロレスを。もっともっと生きたくて、輝きたくてやってるんだろ、プロレスを。だったら、その瞬間瞬間をムダにせずに、100%、200%、1000%、パッションを出し続けないとダメでしょ。プロレスラーなんだから」

 そういう選手たちの戦いは、人を否応なく惹きつける。ただ格好良く、強く、凄いだけではなく、自分にはなかなかできない生き様を見せてくれるものであり、だからこそ自分の気持ちの代弁者として、夢を重ねる存在として勝ってくれることを願い、共に一喜一憂できる。

【次ページ】 ジュリアが格好良すぎる坊主姿になるのは明らか

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