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自分と闘うアントニオ猪木は必ず復活する 78歳の新しい夢へ、「一緒にインドにゴミを見に行きましょう」
posted2021/03/12 17:01
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
アントニオ猪木は腰の治療で入院中だが、懸命にリハビリに励んでいる。先日YouTubeアントニオ猪木「最後の闘魂」で公開された映像はショッキングで、ファンの間でも反響を呼んだ。痛々しささえも感じられた。そこにはすべてをさらけ出す猪木がいた。
腰の痛みから、意識的に体重を落としたことで「かなりやせた」印象だ。体力を回復するには逆に食べなくてはならないが、自慢の驚異的だった猪木の胃袋も昔のようには行かない。
猪木は78歳になった。遺伝的な心臓の難病も抱えているが、これは薬を飲んでしのいでいる。「心アミロイドーシス」という名の疾患で、アミロイドという溶けにくいたんぱく質繊維が心臓にくっついてしまう。アミロイドが心臓につくと、心室の壁が厚くなり、心不全を引き起こすというものだ。
「猪木家で77歳より長生きした者はいない」
「祖父が船でブラジルへ移民する途中に77歳でなくなった。猪木家で77歳より長生きした者はいない。兄貴たちもたぶんこれだったんだろうな」と昨年、喜寿を迎えた後、猪木はそう語った。
「元気が売り物の猪木がこれではなあ。早くお迎えが来てほしいよ」と本人は会うたびにそういうが、言葉とは裏腹に戦う姿勢は崩していない。「一粒5万円だよ。稼がなくちゃなあ」とその命の綱のような心臓の薬の値段を笑っていた。5万円を365日のみ続けるといくらになる、というものだが、今では保険が適用されるようになったという。
猪木がパジャマ姿のうつろな目で体を動かしている。それは、リング上で、もうダメだとファンが思っても、何かに憑かれたようにスーッと立ち上がって来た猪木の姿と重なる。