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「頑張ったね」サクセスブロッケンの“誘導馬引退”と最後のキス ダービーの夢を叶えたふたりが歩むそれぞれの道
text by
カジリョウスケRyosuke Kaji
photograph byRyosuke Kaji
posted2021/03/13 06:00
サクセスブロッケンと葛原耕二は強い信頼関係を築き、引退レースのフェブラリーSまでともに歩んだ
異例の注目に強いプレッシャーがかかったフェブラリーS
しかし、再び新型コロナウイルスの脅威が忍び寄る。年が明けた1月7日、ついに首都圏の1都3県に対して2度目の緊急事態宣言が発令された。「ファンの前で引退の花道を飾らせたい」というスタッフの思いも虚しく1月9日からの中山競馬も再び無観客開催となる。2月に行われるフェブラリーS当日の観客受け入れもかなり厳しい見通しとなった。それでも、サクセスブロッケンの誘導馬引退のことはファンにしっかり伝えたい。東京競馬場は広報活動やSNSを通して積極的に情報発信を行なった。その甲斐あって、サクセスブロッケンのもとには多くのメディアも訪れ、誘導馬ながら引退が記事になるほどの異例の注目が集まった。
そのような状況を背景に、葛原にはダービー以来の強いプレッシャーがかかっていた。フェブラリーS当日に誘導業務に就けないような事態はなんとしても避けなければならない。実は1月にフレグモーネ(肢に細菌が入り込み化膿を起こす疾患)を発症して足が腫れたことがあった。幸いすぐに治ったが、葛原は「毎朝、馬房から出す瞬間はドキドキしていた」と話す。祈るような思いで日々のケアを行なっていた。
2月21日、フェブラリーS当日の朝を迎え
2月21日、フェブラリーS当日。サクセスブロッケンは無事に当日の朝を迎えることができた。ダービーの時と同じように午前中の誘導をこなした。午前の誘導業務を終え、午後の担当と交代したサクセスブロッケンは、一度乗馬センターに戻り馬房で“その時”を待った。