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「“体にやさしい”は思い込み」伊達公子が批判… 日本で5割を占める“砂入り人工芝”コートと、育成の大改革案とは
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byYuki Suenaga
posted2021/03/10 17:05
日本のテニスコートの5割を占める砂入り人工芝について、伊達はことあるごとに批判的な立場を明確にしてきた
バウンドが低いということは「調整しにくい」だけでなく、それに慣れてしまうと、世界の主流であるハードコートやクレーコートの上でスピンのかかった高いバウンドのボールに対応できず、またそういったショットを磨くこともしないというテクニック面での弊害もあるという。砂入り人工芝で勝てても世界では勝てない、そんな傾向が日本の若い世代に広がることへの危惧は前々から囁かれてはいた。
とはいえ、週末をテニスコートで楽しむような娯楽プレーヤーと、世界で戦うプロ選手の感覚はまったく違うだろう。ハードコートよりも砂入り人工芝のほうが稼働率が良く経済的だという施設側の主張も根強い。将来グランドスラムで戦うような一握りの選手のために、その考えをあらためてください、という説得がどこまで通じるか……。
先日、『伊達公子×YONEX PROJECT』の最終キャンプを訪れていた日本テニス協会の土橋登志久・強化本部長は、こう話した。
「どうしても砂入り人工芝がいいという利用者やテニス施設が多くあることは確かで、全てをハードコートにしようというわけではありません。協会としては普及と強化の両面を考えないといけないので、うまく“棲み分け”ができれば。強化を担当する自分の立場としては、伊達さんの主張と完全に一致している。協会として協力できることはあるし、逆に僕たちが伊達さんの力を借りたい部分もあります」
ハードコート推進派にとっての一つの大きな成功例は、伊達の復帰戦の舞台となった岐阜メモリアルセンター・長良川テニスプラザが2010年に砂入り人工芝から全面ハードコートに改修し、そのままの姿を今に残していることだろう。2012年の岐阜国体の開催に合わせたものだったが、そこには伊達の強い働きかけがあり、県協会にはこの問題提起に大きな理解を寄せてくれる人々がいた。
「アジアから選手を受け入れられる規模の……」
何十年かかるかわからないが、国体という行事が<環境整備>を実現していく希望になるのではないかと伊達は考える。そして、それとは別に抱いている夢もある。