Jをめぐる冒険BACK NUMBER
新生・浦和の象徴は大卒ルーキーとJ2育ちの新顔トリオ? リカルド新監督も驚く“欧州トレンド戦術”の浸透ぶり
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byURAWA REDS
posted2021/03/01 11:10
浦和のアカデミー出身の伊藤敦樹、金髪で将棋好きという小泉佳穂、栃木から加入の背番号15明本考浩。3人が“欧州のトレンド戦術”を標榜するリカルド浦和の象徴となるか
FC東京の得意技ファストブレイクを封じた
FC東京の特徴のひとつにファストブレイクがあるが、浦和はボールを失ってもすぐに回収に動き、相手に得意技を出させなかった。これには敵将の長谷川健太監督も「浦和のプレスバックが素晴らしかった」と舌を巻いたが、それも、狙いとする攻撃ができていたからだろう。リカルド・ロドリゲス監督が明かす。
「カウンターをうまく止める秘訣はやはり、良い攻撃にある。それぞれが適切な立ち位置で攻撃すれば、必然的にディフェンスにすぐに入ることができ、抑えられる」
浦和の下部組織出身の伊藤と、両足が使える小泉
ボールを保持する時間を長くして、相手もコントロールする――。
まさに「新生・浦和レッズ」のお披露目に成功したが、その象徴となったのが、新顔の3人――大卒ルーキーの伊藤、J2・FC琉球から加入した小泉、同じくJ2・栃木SCからやって来た明本だ。
浦和のアカデミー出身で、流通経済大を経て戻ってきた伊藤は、サイドチェンジやミドルシュート、激しいボール刈りといったダイナミックなプレーと、繊細なポジショニングやワンタッチのさばきなど、柔剛併せ持つ大型ボランチだ。
「最初のほうは緊張もあってボールタッチの部分でミスがあったが、守備や攻撃でもサイドを変えるなど、思っていたよりはできたと思う」と振り返ったように、右サイドで攻撃の組み立てにも関わり、33分にはミドルシュートを狙った。慣れてくれば、ボックス・トゥ・ボックスのプレーが披露できるようになるだろう。
トップ下に入った小泉は、両足を自由に操れる両利きのプレーヤー。ライン間に顔を出して狭いエリアで前を向き、ワンタッチでパスをさばくセンスも抜群。相手守備陣にとって嫌な存在となっていた。オフサイドになったものの、5分に杉本健勇へ繰り出したスルーパスは、名刺代わりのプレーと言っていい。
ただし、11分のパス、12分のパス、19分のターンと、攻撃へと転じる際に犯した序盤のミスは、反省材料。このポジションには武田英寿、関根貴大、武藤雄樹、伊藤涼太郎、明本らが控える激戦区だけに、小泉としては手応えを掴みながらも、ウカウカしてはいられない心境だろう。