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“ラッキーな最下位”湘南は『自動降格枠の拡大』で生き残れるのか?――それでも「目指すのはJ1残留ではない」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/02/27 06:04
昨年はJ1で最下位に終わった湘南ベルマーレ。本来ならJ2降格となるが、新型コロナウイルス感染拡大による大会方式の変更で、今シーズンもJ1で戦う
ベルマーレと言えば、タテに速い攻撃が思い浮かぶ。それに加えて昨シーズンは、幅広い攻撃パターンの構築に着手した。相手守備陣を左右に揺さぶってからの得点が見られ、CKとスローインを起点とした得点も「11」を数えた。その一方で、湘南スタイルの代名詞的なショートカウンターとカウンターが、得点に結びついたシーンは少なかった。
「優先順を間違えちゃいけない」と話すのは、共同キャプテンの岡本拓也だ。加入6シーズン目の28歳は、昨シーズンに続いてチームの先頭に立つ。
「まずは自分たちらしい良い守備からの良い攻撃を、素早く前へというエネルギーを、しっかりと出していく。カウンターを狙いながら、それができないときに遅攻で、という気持ちでいるべきだと」
36歳でチーム最年長の石原直樹も、「使い分け」の必要性を指摘する。12年ぶりの古巣復帰となった昨シーズンは、27試合に出場してチーム最多の6ゴールをマークした。
「どれかひとつではなくカウンター、セットプレー、遅攻と、どれでも取れるようにしないといけない。カウンターへ持ち込めない場面ではしっかりつないで崩していくとか、そういう使い分けをしながら得点パターンを増やしていきたいですね」
1勝1分1敗のペースを積み上げて「勝点50」
得点力アップの先に見据えるのは、しぶとく勝点をつかんでいく戦いだ。昨シーズンは19敗のうち14敗までが1点差負けだった。引分けも9試合を数えた。浮嶋監督が補足する。
「1点差で勝点が大きく変わってくるゲームが、14試合と9試合で合計23試合ありました。全体の70パーセントの試合で勝点3を取り切る、勝点1を取る、ということができなかったということで、苦しい時に失点しない、苦しい時に点が取れるチームを作っていきたい」
勝点のターゲットは「50」に設定している。浮嶋監督は「3試合ごとに考えると、3連勝なら勝点9取れるわけですが、少なくとも勝点4を取っていくことを目ざす」とする。1勝1分1敗のペースを積み上げていけば、勝点50は見えてくる。残留争いに巻き込まれることはないだろう。
21歳の石原「目指すのはJ1残留ではない」
重要なのはシーズンの入りかただ。昨シーズンは2月の開幕戦で浦和レッズに競り負け、7月の再開後も4戦勝利なしと躓いた。
それだけに、石原直樹は「最初からダッシュしたいですよね」という。大宮アルディージャ、サンフレッチェ広島、浦和レッズ、ベガルタ仙台でプレーしてきたストライカーは、J1優勝もJ1残留争いも知る。
「色々な経験をしてきて思うのは、ホントに1試合、1試合が大事だということ。1試合もムダにしちゃいけない。だんだん良くしていこうではなく、開幕からすべて出し切るぐらいの気持ちでやっていきたいです。順位を上げていくためには、勝点1がものすごく大事になっていくと思うので」