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フィギュア界「金メダリストは名コーチになれない」は本当? プルシェンコはジンクスを破れるか
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/02/16 17:00
トリノ五輪男子シングルの金メダリスト・プルシェンコ。トゥルソワやコストルナヤをどのように育てるか
さらに現在世界のトップアイスダンサーの半分以上を抱えている、と言っても大げさではないほど勢いのあるカナダのマリーフランス・デュブレイユとパトリス・ローゾンの夫婦コーチも、選手としては世界選手権銀メダルまでだった。
2位に終わった選手たちがコーチとしては多くの五輪チャンピオンを育て、頂点を極めた選手がコーチとしては実績を残せないのは、一体なぜなのだろうか?
天才肌はコーチに向かないのか
一説には、オリンピックで優勝する選手には天才肌が多く、自分ほどの才能がない選手を引っ張り上げる忍耐がない、という。
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1994年と1998年のオリンピックをパートナーのオクサナ・グリシュークと連覇した、アイスダンサーのエフゲニー・プラトフに、これに関して質問したことがある。現在フロリダで指導をするプラトフは、一時はタチアナ・タラソワのアシスタントとして荒川静香や高橋大輔など、日本の選手の指導にも関わってきた。
「あなたのような才能のある人がコーチとして生徒を指導しながら、なぜこんなことができないのだろう、と思うことはありませんか?」
プラトフは一瞬沈黙し、静かな声でこう答えた。
「ありますよ。毎日です」
地に足がついた温厚な彼でも、やはり心の中の葛藤はあるという。
少数ながら例外もいる
さらにもう1つの理由は、多くの場合、金メダリストにはアイスショーやテレビの仕事など、多くのオファーが殺到するためだろう。表舞台の仕事で忙しく、コーチという地味で根気のいる裏方の仕事に回る時間がないうちに、気が付いたら違う道が開けていた、という人も多いに違いない。