フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
フィギュア界「金メダリストは名コーチになれない」は本当? プルシェンコはジンクスを破れるか
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/02/16 17:00
トリノ五輪男子シングルの金メダリスト・プルシェンコ。トゥルソワやコストルナヤをどのように育てるか
実を言えば、少数ながら例外もいる。1980年オリンピックアイスダンスチャンピオンのナタリア・リニチュック&ゲンナジ・カルポノソフはその後おしどり夫婦になり、アイスダンス界の指導者として一世を風靡した。
またモスクビナの生徒だった1984年オリンピックペアチャンピオンのオレグ・ワシリエフは、コーチとして2006年トリノオリンピックペア金メダリスト、タチアナ・トトミアニナ&マキシム・マリニンなどを育て、安定したコーチ活動を続けている。
彼らに共通しているのは、いずれも旧ソ連の選手でシングル選手ではなかったことだ。オリンピックで優勝してもそこまで注目されることもなく、金メダルによって人生が変わることもなかったに違いない。
プルシェンコはジンクスを破れるか
ADVERTISEMENT
その意味では、数年前にスケートアカデミーを設立したエフゲニー・プルシェンコが、指導者としてどのくらいの結果を出してくれるのか、興味深く見守っている。彼ほど子供の頃から天才と注目され、競技活動中も引退後もスポットライトを当てられてきた人物はあまりいない。本格的にコーチ活動を開始して、昨年はアレクサンドラ・トゥルソワと、アリョーナ・コストルナヤの2人が立て続けにプルシェンコの下に身を寄せた。彼女たちが北京オリンピックで表彰台に到達できるか、コーチの彼にとっても試練となる。
また北京オリンピックで金を狙う中国の隋&韓を指導するのは、2010年バンクーバーで中国のペアとして初めてオリンピック金を手にした趙宏博だ。
冒頭で述べたカレイラ&ポノマレンコの新コーチ、スコット・モイアも、テッサ・バーチューと一緒に2010年と2018年のオリンピックで金メダルを手にしたスター選手だった。
新世代の元金メダリストコーチたちが、どのような腕前を見せてくれるのか。はたしてジンクスを破ってくれるのか。北京オリンピックの観戦に、楽しみが増えそうだ。