フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
フィギュア界「金メダリストは名コーチになれない」は本当? プルシェンコはジンクスを破れるか
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/02/16 17:00
トリノ五輪男子シングルの金メダリスト・プルシェンコ。トゥルソワやコストルナヤをどのように育てるか
スポーツにおいて、名選手は必ずしも名監督にならない、とよく言われる。特にフィギュアスケートにおいて、オリンピックチャンピオンはコーチに向かない、というのはジンクスの1つと言えるかもしれない。過去にオリンピック金をとった大スターたち、カタリナ・ビット、スコット・ハミルトン、ブライアン・ボイタノなど、いずれもコーチの道は選択しなかった。
中でも必ず引き合いに出されるのは、旧ソ連出身のイリナ・ロドニナである。ペア選手として、2人の違うパートナーと72年札幌、76年インスブルック、80年レイクプラシッドのオリンピック3連覇を果たし、世界選手権10回連覇という、近年では並ぶもののない記録を作った。152センチの小柄な体で、史上最強の選手とも言われた彼女だが、コーチとしては1995年世界チャンピオンのコバリコワ&ノボトニー(チェコ)を指導した以外、これといった結果を残していない。
名コーチはなぜか銀メダリスト?
ちなみにロドニナが最初のパートナー、ウラノフと初めて優勝した1969年世界選手権で、2位だったタマラ・モスクビナ&アレクセイ・ミーシンは、2人とも歴史に残る名コーチとなった。モスクビナはこれまで4組のオリンピック金メダリストペアを育て、他にも川口悠子&アレクサンドル・シュミルノフなど、数多くの世界選手権メダリストを指導してきた。ミーシンもアレクセイ・ウルマノフ、エフゲニー・プルシェンコなどのオリンピック金メダリストを育て、現在もエリザベータ・トゥクタミシェワやミハイル・コリヤダなど、トップ選手を抱えている。
ADVERTISEMENT
羽生結弦を2度の金メダルへと導いたブライアン・オーサーコーチも、現役時代は世界タイトルを手にしながらも、オリンピックでは2回とも銀メダルに終わったことはよく知られている。