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宇都宮ブレックスのHCが「全選手」を出場させる理由 「試合には出ず『練習は頑張れ!』では厳しい」
posted2021/02/12 11:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
TOCHIGI BREX INC.
日本のスポーツクラブの常識の枠にはまらない。
そう感じさせるのが宇都宮ブレックスだ。彼らはBリーグ初代王者であり、今シーズンもリーグ首位を走っている。
日本のスポーツ界では、「日本のファンはチームではなく、人につく」と言われることが多い。
たしかに、特定の選手に人気が偏っているケースは多い。
クラブは、そのプロモーションの即効性ゆえに特定の選手を「推す」ことがよくある。
それはときとしてブームを生むが、ブームはあっけなく消費される。往々にしてブームは当事者たちに不信感と徒労感をもたらす。人気拡大のためのドーピングみたいだ。副作用はある。
では、彼らの本拠地であるブレックスアリーナはどうだろう?
確かに、田臥勇太のユニフォーム、現役の日本代表である比江島慎のTシャツやライアン・ロシターの背番号の入ったグッズなどを身に着けた、様々な選手を「推す」ファンが見られる。
だが、ブレックスアリーナでは特定の選手のものだけが目立つわけではない。試合中の応援も、特定の誰かがフィーチャーされることはない。
全体を見ると『箱推し』の雰囲気がある。『箱推し』というのは、そのチーム全体のファンということだ。
これは日本のスポーツクラブとしてはとても珍しい。
何故そんな空間になっているのだろうか?
ヒントはチームの近況にある。
千葉ジェッツ戦の2連勝の価値は大きい
昨年12月、日本代表でも活躍するエースの比江島が右足を負傷した。そこから数試合はチームにも動揺が見られたが、1月になって調子を完全に取り戻した。
1月23日と24日の千葉ジェッツとの首位攻防戦では、今季のベストとも言える内容で相手を圧倒して、2連勝。
シーズン終了時に勝敗が並んだ場合には、直接対決の成績で順位が決められるのがBリーグのルールだ。この2連勝により、2位千葉とのゲーム差は順位表に表記されるものよりも、実質的には1ゲーム分多くなった。全日程終了時に勝敗が並んだケースが過去にも複数回あったから、連勝の価値は大きい。