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ブレイキンが五輪競技に採用「ダンスはスポーツですか?」国内プロリーグの神田勘太朗代表に聞いてみた
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byD.LEAGUE 20-21
posted2021/02/06 11:01
1月10日開幕した今シーズンのD.LEAGUE。9チームが参加し、レギュラーシーズン4戦とトーナメント形式のチャンピオンシップが開催される
現在KOSÉ 8ROCKSでディレクター兼選手を務める23歳のISSEIと18歳のShigekixは、3年後に予定されているパリ五輪でメダル射程圏内。ほかにもメダルを狙える選手が男女ともに控えている状況だという。
「ブレイキン、ひいては日本のダンスのレベルがなぜ高いか。これは持論ですが、子どもの頃から習う環境があることも大きいのではないでしょうか。2000年頃からレッスンを受けられるスタジオが増えましたし日本が安全であることも大きいと思います。フランスやアメリカに行った時に感じたのが夜8時くらいに外を歩くのはけっこう怖いということ。でも日本では子ども一人で夜の20時、21時くらいでも歩けて、レッスンに行けたり、夜遅い練習ができたりする環境が整っているのもレベルを押し上げている一因だと思います」
一方で、ダンスの今後へ向けて課題も感じている。
「オリンピックに採用されたとはいえ、まだルールが定まっているわけではありません」
ブレイキンは人の目によるジャッジで勝負が決まる、いわゆる採点競技だ。オリンピックのルールに限らず、歴史が新しいだけに、どう審査するか成熟しているとは言えない。その課題はD.LEAGUEも抱える。
「ダンサーとしてはここが点数高かったと言っても、一般の観ている人としては納得できなかったりもする。そこをどう解説していくか。圧倒的に足りないのは解説、評論する人です」
ダンスの将来に可能性しか感じていません
それと関連して、ダンス人口が増えるばかりでなく、観る人の獲得も発展の鍵を握る。
「感情を揺さぶるのは、『熱さ』だと思うんです。『この人、懸けてきたな』というのが伝わることで感情が揺さぶられる。ふだんはサッカーに興味ない人でも日本代表の試合は熱心に観たりするじゃないですか。観る人の心を動かすポイントは熱量だろうと思うんです。ダンスも熱量にほだされる方をどこまで増やせるか……。ただ、今はD.LEAGUEも(新型コロナウイルスにより)無観客でやらざるを得ない。この状況がしばらく続くかもしれない。その上でどう熱量を伝えるのかを考えなければいけません」
それでも、神田はこう語る。
「ダンスの将来に、可能性しか感じていません」
ダンス人口の増加など明るい材料がいくつもある。さらにダンスの特性がそう感じさせる。
「ダンスは道具がいらないし、言葉もいらない。世界的なコンテンツになり得る。実際、ダンサー同士もSNSで簡単につながっている。世界のいろいろな人とつながることができるのがダンスなんです」
だから、可能性しか感じない。
「パリ(五輪)が決まって、シーンが大きくなりますし、またダンスの幅が広がります。せっかく採用されたのだから、いかしていきたいですね」
熱のこもった語り口とともに、神田は先を見据える。