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羽生善治との黄金カード再び! “ゲームの天才”森内俊之50歳、ついにAI導入で「明らかに将棋の理解度が…」 

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片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byShota Matsumoto

posted2021/01/27 11:01

羽生善治との黄金カード再び! “ゲームの天才”森内俊之50歳、ついにAI導入で「明らかに将棋の理解度が…」<Number Web> photograph by Shota Matsumoto

46歳の若さで順位戦フリークラス入りを決断した森内俊之だが、Number1018号のインタビューで「私の最盛期はこれからです」と力強く宣言している

 バックギャモンは、サイコロの目を唯一の動力としてゲームが進行する西洋スゴロク。将棋やチェスとは全く性質が異なる、偶然に左右されるゲームだ。

 とはいえ、単独のコマを作ると相手が出す目によっては場外に弾き飛ばされてしまうリスクなどがあり、戦略的な要素も多く内包されている。森内は、このゲームを森けい二九段から習い、すぐに面白いと感じて突き詰めて勉強した。

偶然性をも手の内に入れるゲームの天才

 その結果、初めて出場した世界選手権で4位入賞という快挙を成し遂げた。「サイコロの転がりに恵まれたベスト4でした」と謙遜する森内だが、どんな競技でも世界の4位はそんなに簡単な場所にはない。つまりは、偶然性をも手の内に入れてしまうことができる、類い稀なゲームの天才が森内俊之という人なのだ。

「いま思えば、チェスについてはアプローチの仕方がそもそも間違っていましたね。本を読むより、インターネット上にたくさん存在している講座を見まくる方がずっと効率的でした。YouTube『森内俊之の森内チャンネル』を開設した動機というのも、将棋上達を目指す人のお役に立てるのではないかと考えたからです。バックギャモンの勉強ですか? それは、躊躇なくAIに頼りました。2000年代に入ってすぐくらいから触れていましたから、もともとAIとの付き合いには抵抗感がないんです」

 いまデジタル世代と言われている若手棋士たちがこの世に生を授かったかどうかの時期から、いち早くデジタルの世界に溶け込んでいたのに、本職の将棋に活用し始めたのは'20年に入ってからだという。のけぞりそうになるのを堪えながら聞く話だった。

22年連続A級以上の森内が突然のフリークラス宣言

 名人位に8期。A級順位戦には名人在位を含めて22年連続でトップランクを保持した森内が、B級1組降級が決まった'17年3月に、あまりにも潔いフリークラス宣言をしてしまった。引退後に十八世名人を名乗る者としての矜持をわかりやすすぎる形で示したわけだが、そのとき森内はまだ46歳。事実上、名人戦の舞台には二度と上がれなくなったことを惜しむ声も、当然少なくなかった。

 プロ棋士のフリークラス宣言は、順位戦を指さない選択だ。入念な準備が必要な対局が年間で10局程度減ることになった結果「精神的に随分と楽になった」と当時を振り返った森内は、すぐさま日本将棋連盟の理事職につき、空いた時間と労力を組織の運営に注ぎ込んだ。

 ただ、慣れない仕事に気を遣う日々に戸惑うことになったのは森内としても想定外で「一時は10キロ以上体重が減った」と明かす。それでも任期の2年間を全力で働ききり、次の理事選挙には出馬すらしなかった。こういう切り替えの鮮やかさがいかにも森内流。気持ちが、将棋に再び戻ってきたのだ。

 そして、満を持して本職へのAI導入である。

【次ページ】 「毎日、時間が許す限り触っています」

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