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作者の名は「藤井聡太」でSNSざわつく…藤井二冠と斎藤慎太郎八段「年1度の詰将棋」がつないだ美しき関係
posted2021/01/16 17:03
text by
諏訪景子Keiko Suwa
photograph by
KYODO
藤井聡太二冠は詰将棋解答選手権を5連覇中だ。
……というのは誤りではないのだが、厳密に言えば詰将棋解答選手権「チャンピオン戦」を5連覇している。
詰将棋解答選手権にはチャンピオン戦のほかにアマチュア向けの「初級戦」と「一般戦」があり、全国のボランティアが運営する。2019年は北海道から九州まで27カ所で開催された(2020年は30カ所での開催が予定されていたが、全て中止。2021年はオンラインでの開催が検討されている)。
「3手詰を誤答した」小1の藤井少年
藤井二冠が初めて解答選手権に参加したのは2010年で、名古屋会場で初級戦と一般戦に出場している。当時小学1年生、東海研修会に入会した直後のことだ。初級戦は1手詰から5手詰を、一般戦は5手詰から15手詰を、それぞれ制限時間内に解く。最長39手詰が出題されるチャンピオン戦に比べると手数は短いものの、あっと驚く妙手が混じる好作が並んでいる。
藤井少年は初級戦で制限時間の3分の1も使わずに解き終えたものの、誤答があって中位の成績にとどまる。ただし一般戦では、名古屋会場では2人だけの全問正解を成し遂げる。もうひとりの水谷創さんは後に全国優勝を果たすアマ強豪。全国で見ても226人中、28人しか達成していない好成績だった。
藤井少年が誤答した問題は初級戦6題のうち、正解者が最も少なかった。わずか3手詰だがちょっとした「罠」があり、成績上位に入るためにタイムを稼ごうとすると、見落としやすい。罠にはまったときに「こんな手があったのか」と歓びを覚える人は、詰将棋との相性がいいだろう。藤井少年もそんなタイプだったのだろうか。
翌2011年、初級戦は見事にリベンジ。制限時間40分のところを全国最速の3分で解くおまけつきだった。今度は一般戦で間違えたが……。
「年に一度の解答選手権のときだけ会う関係」
さて2010年、チャンピオン戦でも第1ラウンドで制限時間内に解き終えながら、「間違えた……」とぼやいていた人物がいる。16歳だった斎藤慎太郎八段(当時、奨励会三段)だ。後に「素晴らしい作品を解かせていただいて幸せ」と優等生のコメントを残した斎藤八段にも、順位を狙って落とし穴に落ちた時代があった。