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大坂なおみの写真削除、ジョコに「かっこつけの馬鹿」批判… なぜ全豪は開催前から“大炎上”なのか
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2021/01/25 17:02
練習場入りするメルボルン組の選手たち。全豪開幕前から“練習格差”が生まれている
「急に降って湧いたような話で不自然。彼らは1日5時間の制限を気にせず、ホテルのジムで好きなだけトレーニングができるし、外にも出られる。ほとんど普段通りの生活ができるんだから。まるで特別扱いのためのイベントだ」
もちろん、彼らは<特別>である。そんなことは、皆わかっている。グランドスラムでも試合の時間帯やコートなど、ビッグネームの要望が優先されることは暗黙の了解だし、ツアーではスター選手に高額の出場料が支払われる。プロの世界だ。そのことを声高に非難する者などほとんどいない。しかし、非日常的な不自由さの中で、さらに存在する不公平は受け入れ難いものになる。
ジョコの行動に悪童キリオスが噛みつく
ジョコビッチが選手の環境改善を要望する手紙を協会に送った行動も逆効果だった。要望書には「コート付きのプライベートハウスの手配」「各部屋へのトレーニング器具の配布」「食事の改善」「再度の検査の実施と、陰性の選手の隔離期間の短縮」などが書かれていたというが、のちにジョコビッチは「仲間の状況を思う善意だったが、自分勝手で恩知らずというひどい誤解を招いた」と釈明するはめになった。
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口の悪いニック・キリオスは「かっこつけの馬鹿」とあからさまに王者を非難したが、その一方で世界ランク44位のアルゼンチンのギド・ペラのように「行動してくれたジョコビッチよりも、何も発しないナダルとティームのほうが理解できない」と怒りの矛先を別に向ける選手もいる。
亀裂や分断はどうやって修復されるのだろうか
こうした亀裂や分断はどう修復されていくのだろうか。あたたかいホスピタリティで選手の人気を集めていた全豪オープンを前に、心のあたたまらない話題が次から次へと湧いてくるが、大多数の選手はこの逆境を受け入れ、懸命に立ち向かっていると信じる。
全豪オープンで2012年から2連覇したビクトリア・アザレンカは完全隔離下にあるが、「わずかでもできることがあるなら前向きでいられる」と語り、「コロナと戦うオーストラリアに敬意を表する」と厳しい措置にも理解を示した。